あんな顔で小林綾乃のLINEを求めるなんて。
小林綾乃は絶対に源良江を断るはずだ!
だって小林綾乃が好きなのは自分なんだから。
自分の方が源良江よりずっとイケメンだし。
そう考えると、秋山春樹は背筋を伸ばし、顔には自信に満ちた表情が浮かんだ。
そのとき、小林綾乃は源良江に軽く頷いて言った。「いいよ、今度私たち四人にタピオカミルクティーを奢ってね。」
タピオカミルクティー?
源良江は一瞬呆然としたが、すぐに我に返って「僕、僕が奢っていいの?」
彼は誰かにタピオカミルクティーを奢ったことなんて一度もなかった。
奢りたくないわけじゃない。
機会がなかっただけだ。
小林綾乃は眉を少し上げて「あなたが良ければね。」
「いいよいいよ」源良江は慌てて頷いた。「すごく喜んで。」
小林綾乃はスマホを取り出して「あなたが私をスキャンする?それとも私があなたをスキャンする?」
源良江もすぐにスマホを取り出して「僕、僕が君をスキャンするよ。」
ピッ!
すぐに二人は友達追加を済ませた。
秋山春樹は眉をひそめた。
小林綾乃はどうしたんだ?
彼女は自分のことが好きなはずじゃないのか?
なのになぜ源良江のLINEを追加するんだ!
何がしたいんだ?
どうして源良江のLINEを追加できるんだ!
小林綾乃は自分の気持ちを考えてくれないのか?
小林綾乃は自分も横にいるのが見えていないのか。
秋山春樹は胸の中にモヤモヤした感情を抱えていた。
どっちつかずの。
とても居心地の悪い。
彼は必死に冷静さを保とうとした。
わざとだ。
小林綾乃は絶対にわざとやっているんだ。
彼女はわざとこの場面を見せて、自分を怒らせて嫉妬させようとしているんだ。
そう思うと、秋山春樹は目を細めた。
小林綾乃は自分を甘く見すぎている!
こんなことで怒るわけないじゃないか?
小林綾乃が自分に片思いしているんだ。
自分が小林綾乃に片思いしているわけじゃない。
秋山春樹は平然とした表情を装い、何も見なかったかのように振る舞った。
彼が動揺を見せなければ、焦るのは小林綾乃の方になるはずだ。
一橋啓子が小林綾乃に挨拶に行った。「小林美人。」
一橋啓子が来るのを見て、源良江は興味深そうに聞いた。「知り合いなの?」