096：告白する_6

安田振蔵は学校の門の前で話をするのは適切ではないと分かっていたので、続けて言った。「小林さん、まず車に乗りましょう。それからカフェで話をしながらコーヒーでも飲みませんか。」

コーヒー？

小林綾乃はあまり好きではなかった。

あの苦いものは、漢方薬を飲んでいるようだった。

「お茶屋さんはどうですか？」小林綾乃が提案した。

安田振蔵は頷いた。「いいですね。」

実は、コーヒーよりもお茶の方が好きだったが、最近の若者はみんなコーヒーが好きなようで、同じ通りに三歩ごとにカフェがあるほどだった。

しかし、お茶屋はほとんど見かけなかった。

小林綾乃の好みに合わせてカフェを提案したのに、彼女もお茶が好きだとは意外だった。

安田振蔵は小林綾乃の前に早足で歩み寄り、車のドアを開けた。

小林綾乃はお礼を言って身を屈めて乗り込んだ。

その後、安田振蔵も続いて乗り込んだ。

この光景。

ちょうど、大橋然斗の目に入った。

彼は眉をひそめた。

今の自分は幻覚を見たのだろうか？

なぜ小林綾乃のためにドアを開けた人が、安田振蔵にそっくりだったのか？

しかし安田振蔵は青葉総合病院の院長ではないか！

小林綾乃にどんな資格があって、安田振蔵からそんな丁重な扱いを受けるのか。

彼女は私生児に過ぎないのに！

それとも、自分の目の錯覚だったのか？

大橋然斗は眉をひそめながら、前の運転席の運転手に向かって言った。「中村叔父さん。」

「坊ちゃま、どうされました？」

大橋然斗は続けて言った。「前の車は誰の車か知っていますか？」

中村叔父さんは大橋家専属の運転手で、毎晩学校に大橋然斗を迎えに来ていたため、学校の大半の保護者の車を知っており、高級車を運転する運転手たちとも顔見知りだった。

その質問を聞いて、前を見上げながら困惑した様子で言った。「前のアルファロメオのことですか？」

「はい。」大橋然斗は頷いた。

中村叔父さんは首を振った。「分かりません。初めて見ました。」

大橋然斗は目を細めた。

初めて見る？

大橋然斗は続けて言った。「中村叔父さん、さっきの人は安田院長に似ていましたか？」

中村叔父さんは大橋然斗の方を振り向いて、「坊ちゃま、白いシャツを着てビジネスバッグを持っていた中年の男性のことですか？」

「はい。」