097:賭け、優越感_5

白川露依は再び山下おばあさんに言い返せなくなった。

山下おばあさんは最後のコーラを飲み干し、階段を上がって行った。

白川露依はおばあさんの後ろ姿を見て、少し困ったように首を振った。

やはり年を取ると、わがままな子供のようになるものだ。

山下おばあさんは部屋に戻り、ドアを閉めてから、棚の前に歩み寄り、棚の上に置いてある箱を取ろうとした。

しかし棚があまりにも高すぎて、つま先立ちをしても届かず、仕方なく小さな椅子を持ってきて、やっと箱を取ることができた。

紫檀の箱。

かなり古そうで、表面の塗装が剥げかけていた。

おばあさんは誰にも自分の部屋の掃除をさせなかったので、箱は塗装が剥げているだけでなく、厚い埃も積もっていた。

山下おばあさんはタオルを取り、丁寧に箱を拭き、しばらくしてから蓋を開けた。

パチッ。

蓋が開いた。

中には写真が一枚と、ネックレスが一本入っていた。

写真はカラーだったが、長年の経過で少し酸化していた。ただし保存状態が良かったため、写真に写る若い女性の姿がはっきりと見えた。

少女はピンクのワンピースを着て、花畑の中に立っており、春の花よりも輝いていた。

山下おばあさんは写真の人物をじっと見つめ、次第に目が潤んできた。

これは彼女の娘。

そして、たった一人の娘だった。

「亭亭、あの世でお前は幸せにしているのかい?」

写真の少女は何も答えず、ただ笑顔で山下おばあさんを見つめていた。

ポタッ。

濁った涙が一滴、写真の上に落ちた。

「亭亭、私はお前に会いたくてたまらないよ...」

本当に会いたい、会いたい...

彼女は人前で娘のことを話すことは決してなかった。

白川露依でさえ、姑から義理の妹の話を聞くことは稀だった。

しかし、彼女は常に娘のことを想い続けていた。

娘が事故に遭った時期、彼女は自殺まで考えた。そして、遠藤家の者が山下言野を追い出し、娘が不倫をしていたと誹謗中傷した時まで。

その時から、山下おばあさんは悲しみを押し殺し、山下言野を引き取って自ら育てた。

そして、彼の名前も変えた!

いつか必ず、娘が彼らの言うような人間ではないことを証明してみせる!

一瞬にして、部屋の空気が重く沈んだ。

一方。

小林桂代は運転免許試験場に来て、実技試験を受けることになった。