100:お香を焚く_2

しかし彼は変わった性格の持ち主で、同僚たちともっと交流したいと言って、この大きなオフィスを選んだのだ。

まさか、こんなに早く引っ越すとは思わなかった。

彼が引っ越すのを見て、女性同僚たちの気持ちは複雑だった。

もっと志村文礼と親しくなれると期待していたのに。

やはり。

時が経てば恋が芽生えるという言葉は、決して嘘ではないのだから。

なのに、志村文礼はこんなにも早く引っ越してしまうなんて。

志村文礼は常勤ではなかったが、荷物は意外と多く、重要なものを何点か梱包し終えると、質問してきた同僚を見上げて笑いながら言った。「オフィスを変えるんじゃなくて、病院を変えるんだ。」

病院を変える?!

この言葉に、オフィスにいた他の医師たちは呆然とし、幻聴かと疑うほどだった。

城井芳子は勇気を振り絞って、志村文礼に尋ねた。「志村先生、転勤になったんですか?」