城井芳子は志村文礼が自分を探しに来たのではないと知り、少し落胆し、心臓の鼓動も遅くなった。
すぐに、城井芳子は志村文礼が言及した小林さんが誰なのかを理解した。
今日、小林さんがあの特別な身分の老人の検査のために病院に来ると聞いていた。きっと志村文礼はそのことで来たのだろう。
そう考えて、城井芳子は続けて言った。「小林さんは今、きっと安田院長と一緒にいますよ。」
安田院長という言葉を聞いた瞬間、志村文礼は踵を返した。
城井芳子は再び志村文礼を呼び止めた。「志村先生、ちょっと待ってください。」
「何か用事があるのか?」志村文礼は足を止めた。
城井芳子は続けて言った。「安田院長が小林さんに会うなら、きっと正面玄関は使わないと思います。」
正面玄関を使わない?
志村文礼は眉をひそめた。なるほど、だから病院内を歩いてきても何も異常がなかったのか。