115:嫉妬

山下おばあさんが鈴木澪由に紹介したかった人物は、もちろん小林桂代でした。

どういうわけか。

彼女はいつも小林桂代の目元に徳川秋水の面影を感じていました。

小林桂代の腕には確かにあざがなかったのですが。

年齢さえも合わないのに。

でも…

山下おばあさんはやはり鈴木澪由に小林桂代を会わせたいと思っていました。

結局、二人とも不幸な境遇の持ち主でした。

一人は母親を失い。

もう一人は娘を失った。

会ってみたところで何も損はないでしょう。

もしかしたら、二人には本当に母娘の縁があるかもしれません。

この言葉を聞いて、白川露依は気づかれないように眉をひそめました。

彼女は姑が話している人物が誰なのかを知っていました。

美人亭のオーナーです。

彼女の記憶では、美人亭は最初は無名の小さなブランドに過ぎなかったのに、今では引っ張りだこの人気商品になっていました。

しかし徳川家と比べるとまだ差があります。

それに山下おばあさんがいつも小林綾乃がどれほど素晴らしいかを口にしていることもあり、白川露依はこの母娘に対して少し反感を持っていました。

普通の人なら、初対面でそれほど長く話していないのに、自分の身の上を進んで話すでしょうか?

明らかに。

小林桂代には目的があります。

おそらく、彼女は山下おばあさんを利用しているのでしょう。

小林桂代は山下おばあさんを通じて徳川家とのつながりを作りたいのです。彼女と鈴木澪由は同じような経験を持っているので、彼女が鈴木澪由の実の娘であるかどうかに関わらず、鈴木澪由は彼女に同情するでしょう。そうなれば小林桂代は徳川グループを頼りに美人亭をさらに発展させることができます。

このような人は特に悪いことをしているわけではありませんが、その振る舞いはあまり見栄えがしません。

そして、白川露依は人間関係を利用して近道をしようとする人が本当に嫌いでした。

もし誰もが近道を選ぶなら、この世界は混乱してしまうでしょう。

姑は普段とても賢明な人なのに、なぜかこの母娘に関しては、混乱してしまうのです。

彼女たちが自分を利用していることさえ気づいていません。

そう考えると。

白川露依は心の中でため息をつきました。