第5章 悪い親戚との知恵比べ

杉本蒼一はついに言い出した。「母さんが、あんたに伝えておけってさ。自分の問題に母さんを巻き込むな、それに母さんの金をあてにするなって。あれは老後のためのもので、あんたの借金を埋めるためのものじゃないんだよ。」

なるほど、杉本蒼一は老婆の意向を伝えに来たのだった。普段は老婆は杉本蒼一と同居していたが、杉本律人一家も老婆を大切にしており、良いものがあれば真っ先に老婆に届けていた。

年末年始には、杉本律人は必ず母親に大金を送り、孝行を尽くしていた。それなのに、今、この瞬間、彼の生母までもが彼との関係を断とうとしているのだ。

「はははは! 帰って母さんに伝えてくれよ。俺はどんなに落ちぶれても、母さんの金をあてにするような真似はしないってな。……いや、本当に笑えるな。俺が順調だった頃は、お前らこぞって擦り寄ってきたくせに、今はどうだ? 金をせびるだけじゃなく、縁を切ろうと必死になってる。お前らの本性がよくわかったよ。」

杉本律人は哀しげに笑い、心の底から冷めていった。彼らは皆、自分の親族なのに、最も深く傷つけるのもまた、この人たちなのだ。

松本桂子はそれを聞いて不機嫌になった。「お兄さん、そんな言い方はないでしょう。何が取り入るですか?あの木材工場、私たちだって出資したじゃないですか。どうして取り入るなんて言うんですか?それに、関係を断つのは当然でしょう。お兄さんだって同じ立場なら同じことをするはずです。まるで私たちがお兄さんに借りがあるみたいな言い方はやめてください。むしろお兄さんが私たちに借りがあるんです。お兄さんのせいで木材工場が破産して、私たちの収入がなくなったんですよ。それなのに私たちを責めるなんて」

松本桂子はいつも口が達者で、どんな状況でも自分の言い分を通すことができる。喧嘩になると、絶対に負けることはなかった。

杉本瑠璃は冷ややかな目でその三人を見つめ、彼女の周りの空気が一層冷たくなった。

【どうやら兄貴は本当に金がないみたいだな。いけない、一千万円がなくても何か絞り取らないと。この前みどりちゃんに金のネックレスを買ってやると約束したばかりなのに】

杉本瑠璃が叔父の杉本悠斗を見たとき、彼の頭の中からこのような考えを読み取り、口元に冷笑を浮かべた。

人間、結局のところ、欲望には限りがない。

「一千万円はうちにはありません。百万円なら出せます。当時あなたたちが出資したのは二十万円だけで、経営は全て父がやってきました。この数年、父から相当な配当金も受け取っているはずです。百万円でも十分すぎるくらいです」

杉本瑠璃は冷たく言い放った。その言葉の響きは、普段の彼女の可愛らしい公主のようなイメージとは全く違って、冷徹で無情だった。周りの人々はその言葉を聞いて、思わず立ち止まり、杉本瑠璃を見つめた。その眼差しは、まるで別人を見ているかのようだった。

「それと、叔父さん、もう報告に戻っていいですよ。うちの借金は自分たちで返します。決して他人に迷惑はかけません。今日来たのは私たちとの縁を切りたいからでしょう。今後、杉本家が裕福になっても、厚かましく親戚面をしに来ないでください」

なんと!

これらの言葉が杉本瑠璃の口から出たとは、あまりにも衝撃的だった。まるで平手打ちを何発もくらったようだった。

全員が目を丸くして驚いた。普段の杉本瑠璃は最も温厚で、誰もが認める良い子で、とても優しかった。今日のような発言は、本当に驚くべきものだった。

叔父の杉本蒼一は杉本瑠璃に皮肉られ、面目を失った。これは明らかに彼らが虚栄心にとらわれ、杉本蒼一家が裕福な時は取り入り、落ちぶれれば見放すという批判だった。

どんなに厚かましい人間でも、年下の者にこれほど露骨に皮肉られては、顔が火照るような思いだった。まるで人前で平手打ちを食らったようだった。

「ごほん、ごほん、用事があるので。母さんの言葉は伝えました。私は先に失礼します」

本来、杉本蒼一はお金を要求しに来たわけではなく、ただ関係を断ちに来ただけだった。杉本瑠璃にここまで皮肉られては、彼にも面子がある。これ以上ここにいる顔がなく、急いで言い訳をして立ち去った。

杉本蒼一にはまだ人間性が残っていたが、杉本悠斗にはそんなことは関係なかった。今日は金を要求しに来たのだから、杉本蒼一家から搾り取れるだけ搾り取らなければならなかった。

「杉本瑠璃、これは大人の話だ。子供が余計な口を出すな。分からないなら横にいろ。お前が話す場じゃない」

叔父の杉本悠斗は杉本瑠璃に向かって苛立たしげに手を振り、眉をひそめ、明らかに杉本瑠璃を快く思っていなかった。

杉本瑠璃は冷たく叔父の杉本悠斗を見つめた。「叔父さんの内緒のお金も少なくないでしょう。少なくとも二千万円はあるはずです。一千万円欲しいなら簡単です。その二千万円を私たちの運転資金として出してくれれば、会社の業績が良くなった時、一千万円どころか一億円だって出せます」

なんだって?

二千万円!

杉本瑠璃の言葉に、その場にいた人々は再び衝撃を受け、皆が杉本悠斗を見つめた。特に杉本悠斗の妻の松本桂子は。

「どういうこと?何の内緒のお金?何の二千万円?あなたどこからそんなお金を?今日はっきりさせなさい。ふん、よくもそんなにたくさんのお金を隠していたわね。言いなさい、そんなにたくさんのお金を隠して何をするつもり?外で浮気でもしているの!」

松本桂子はまるで機関銃のように、息つく暇もなく話し続けた。杉本悠斗は目を泳がせ、最後にニヤニヤしながらなだめた。「奥さん、あの死に損ないの言うことを真に受けないでくれ。俺にそんな内緒のお金なんかないよ。俺のお金は全部お前に管理してもらってるだろう。お前も知ってるように、俺が外で誰かと食事するときだって、前もってお前に報告してるんだ。どうして浮気なんかできるんだ」

杉本悠斗は杉本瑠璃を睨みつけた。「この生意気な娘め、でたらめを言うな。ぶん殴るぞ!」

杉本律人はそれを見て、すぐに娘を後ろに引き寄せた。この弟が怒りに任せて自分の娘を傷つけることを恐れたのだ。

杉本瑠璃は父の手を軽く叩いて、その後ろから出てきて、杉本悠斗と向き合った。その瞳は人を震え上がらせるようなもので、見透かされているような感覚を与えた。

しばらくして、杉本瑠璃は冷たく笑った。「あの二千万円は、以前安藤不動産の仲介をした時に受け取った賄賂じゃないですか?」

安藤不動産?

杉本律人はその言葉を聞き、目を見開いた。確かに以前から、杉本悠斗が安藤不動産に納めた木材の帳簿、数量、価格には不審な点があると感じていた。ただ、弟を問い詰めるのも気が引けて深く追及しなかった。まさか、悠斗があれほどのリベートを受け取っていたとは……!

一方、その瞬間、杉本悠斗の心臓は大きく跳ねた。彼の視線は杉本瑠璃に向けられ、そこには恐怖と警戒の色が浮かんでいた。

どうして彼女がこのことを知っている? これは自分と安藤不動産の購買担当者しか知らないはずの話だ。他の誰も知るはずがない。なのに、杉本瑠璃はすべてを知っている。取引相手だけでなく、受け取った金額まで正確に。

これは……恐ろしすぎる。

「い、いや……そんなはずがない! お前がどうしてそれを知っている!」

あまりの衝撃に、杉本悠斗は思わず口を滑らせた。その言葉を聞いた松本桂子の顔が一気に怒りに染まり、勢いよく杉本悠斗に掴みかかった。

鋭い爪が頬を引っかき、杉本悠斗の顔にはすぐに幾筋もの血の跡が刻まれた。走る痛みが、ようやく彼を現実に引き戻した。