以前の経験から、杉本瑠璃はおおよそ把握していた。どのような手触りの原石に翡翠が含まれているのか。その小さな原石が手のひらに伝える滑らかな感触は、大きな変化はなく、ただ軽い心地よさを感じさせるだけで、中には翡翠があるものの、ごく小さな端材程度のものだった。
この感触を掴めさえすれば、どの原石に翡翠が含まれているかがわかるはずだ。
そう考えると、杉本瑠璃は全身の血が沸き立つのを感じた。もし彼女の感覚が本当にこれほど正確なら、新たな稼ぎ方が見つかったことになる。
羽田和彦がいるので、杉本瑠璃は今回は大きな原石を選んでいた。周知の通り、大きな原石は小さな原石よりも翡翠が出る確率が遥かに高いのだ。
他人の疑いを避けるため、杉本瑠璃はわざわざ一式の道具も用意した。原石切りに使う専用の道具だ。羽田和彦は気前よく、完璧な道具一式を揃えてくれた。
杉本瑠璃は以前吉田太郎から教わった初歩的な知識に従って、見せかけだけの原石選びを演じていた。
杉本瑠璃は手にミネラルウォーターを持ち、原石に少量をかけ、強力な懐中電灯で照らして原石の状態を観察していた。表面的な作業は完璧にこなしているように見えたが、実際には常に手で原石の感触を確かめていた。
原石が大きすぎる場合、杉本瑠璃は少しずつ感知するしかなかった。彼女のこの素人っぽい行動は、羽田和彦には見ていられないほどだった。
「こんな風に原石を選んでるのか?はっ、そりゃ端材を引き当てるわけだ」
羽田和彦が指しているのは、もちろん先ほど彼が五百万円で買った翡翠のことだ。
羽田和彦の皮肉に対して、杉本瑠璃は怒る様子もなく、目を上げることもせずに、ただ静かに言った。「端材だとしても、とても価値のある端材ですよ」
羽田和彦は目じりが痙攣するのを感じた。乙女座の完璧主義が再び打撃を受け、彼の玉石人生における一つの失態を思い出させた。
「運、が、良かっただけだ!」
しばらく考えた末、羽田和彦はそれしか言えなかった。
杉本瑠璃は顔を上げ、羽田和彦をじっと見つめ、唇に笑みを浮かべながら真面目な様子でうなずいた。「その通り、運が良かっただけです」
しかも上級な運の良さだ。普通の運の良さでは、五百万円が天から降ってくるはずがない。
後半の言葉は口に出さなかったが、羽田和彦の顔色は変わった。「本当に私を馬鹿だと思ってるのか。言外の意味が分からないとでも?」
杉本瑠璃は少しも怯える様子もなく、軽く微笑んで、澄んだ瞳で目を瞬かせながら言った。「私はただあなたに同意しただけですよ。違いますか?」
自分で自分の首を絞めるとはこういうことか、羽田和彦は今日よく分かった。
まさか彼が杉本瑠璃の真意を暴いて、自分が運の良さを認めるわけがない。
頭がおかしくなっていない限りは。
この瞬間、羽田和彦は少し理解した。なぜ三島様が杉本瑠璃を特別視しているのか。杉本瑠璃には間違いなく、三島様の人を死ぬほど苛立たせる性質が見られた!
一瞬、羽田和彦は杉本瑠璃と三島様を引き合わせたくなった。果たして三島様という老狐と杉本瑠璃という小狐、どちらが手強いのか見てみたかった。
結果がどうであれ、この二人が互いに手こずる様子を見るのも、面白そうだった。
「君の名前は?」
考えが浮かんだら、羽田和彦は当然行動に移した。三島様や杉本瑠璃のような人物には、絶対に敵対的に接してはいけない。
「杉本瑠璃です」
簡潔な返事だった。杉本瑠璃の手は止まることなく、巨大な原石を隅々まで触っていたが、残念ながら、あの滑らかな感触は伝わってこなかった。仕方なく諦めて、次の原石を探すことにした。
「年も若そうだけど、まだ学生なのか?」
羽田和彦は多くの女性を見てきた経験から、杉本瑠璃が学生であることを一目で見抜いた。たとえ彼女の雰囲気が学生らしくなくても。
「はい」
杉本瑠璃は原石の感触を確かめることに忙しく、適当に答えていた。しかし羽田和彦の質問が続くので、仕方なく顔を上げ、澄んだ瞳をその妖艶な顔に向けた。
「羽田グループのご子息は、いつから戸籍調査官を兼職されるようになったんですか?申し訳ありませんが、私はあなたの会社の社員ではないので、一つ一つ答える義務はありません。それに、私に手を出すのはやめてください。未成年への誘拐で訴えますよ」
一言で、羽田和彦を完全に黙らせた。
未成年への誘拐?
彼女のような子を?
「ふん、私、羽田様が女性を欲しいと思えば、誘拐なんて必要ないさ。一夜の恩寵を求める女性たちが、ここから帝都まで列を作って並んでいるんだ!」
羽田和彦は自分の魅力に自信があった。この杉本瑠璃が自分を軽く見ているなんて。仮に未成年を誘拐するとしても、杉本瑠璃のような蕾は選ばないだろう。
杉本瑠璃は立ち上がり、羽田和彦の後ろを横目で見て、それから極めて真面目な様子で言った。「並んでいる女性は見当たりませんが、幽霊なら結構いるかもしれませんね」
ぷっ!
羽田和彦は一瞬で石化した。
命が大事なら、杉本瑠璃に近づかないほうがいい。
「約束を反故にして、原石を買う計画を完全に台無しにされても構わないのか?」
ごね得というのは、彼、羽田和彦もやったことがある。これは完全に気分次第だ。今の彼の気分は非常に不愉快だった。
杉本瑠璃は気にする様子もなく、原石を触り続けながら言った。「では黙っていることにします」
ちょうど原石を見るのに集中したかったし、羽田和彦の相手をする暇はなかった。羽田和彦は綿を殴るような感覚を覚え、杉本瑠璃の欠点を見つけることができなかった。
今度はいい具合に、杉本瑠璃は彼を無視し、完全に原石選びに没頭していた。
羽田和彦のような、イケメンで女性にもてる男性が、杉本瑠璃の前では一堆の原石にも及ばないとは。羽田和彦は杉本瑠璃の目が見えているのかどうか、真剣に疑った。
杉本瑠璃はさらに数個の原石を触り、また滑らかな感触を見つけた。ただし、感触の強さには差があった。
慎重を期して、杉本瑠璃は全部を買うことはせず、最も感触の良い一つだけを選んだ。
「これにします」
杉本瑠璃は人の背丈ほどの原石を指さし、羽田和彦を見た。言外の意味は、羽田和彦が支払いをしてもよいということだ。
羽田和彦は原石を注意深く見て、今回は何も言わずに直接支払いをした。
「原石も買ってあげたし、これで清算だな」
杉本瑠璃も欲張らなかった。今の彼女の能力では、そんなに多くの玉石を守り切れない。原石を買い溜めすることも考えたが、まだその時期ではなかった。
「羽田様は約束を守る方、さすが紳士ですね」
ずっと杉本瑠璃に皮肉を言われていたのに、突然褒められて、羽田和彦はかえって慣れない感じがした。
「ふん、私は常に紳士だ」
杉本瑠璃は吉田太郎を見つけ、彼女が今買った原石を指さして言った。「吉田社長、この原石も切っていただけませんか。切石の費用は私が出します」
前の原石は小さかったので、時間がかからなかったが、このような大きな原石は時間も労力もかかる。吉田太郎が料金を取らないとしても、杉本瑠璃は支払うつもりだった。
吉田太郎も気さくな人で、さっき杉本瑠璃が五百万円を手に入れて借金も返済したので、気を使う必要はないと思った。
「よし、問題ない。私に任せなさい。自慢じゃないが、私の原石切りの腕は一流だよ」