「それはいけません、橋本警官。彼女は重要な容疑者なので、必ず連行しなければなりません!」
橋本警官が杉本瑠璃を連行しないと聞いて、石川賢明は慌てふためいた。
橋本警官は振り向いて石川賢明を鋭い目で見つめ、強い口調で冷たく言った。「石川部長、これ以上執行を妨害するようなことを続けるなら、あなたを署に連行することになりますよ。あなたを襲った犯人は、明らかに杉本さんとは無関係です。もういいでしょう、この件は我々が処理します。余計な口出しは不要です」
羽田和彦が一回り現れて、ちょっと顔を出しただけで、この件は解決し、杉本瑠璃も署に行かずに済んだ。
石川賢明は橋本警官に署へ連行され、石川静香は少し怪我をしたため、ここには現れず病院に搬送されたという。
羽田和彦はこの件を全く気にかけていなかった。彼にとって、これは取るに足らないことだった。
「どうやってこの俺様に感謝するつもりだ?俺様がお前の大きな問題を解決してやったんだぞ」
羽田和彦は少し得意げに杉本瑠璃を見つめ、彼女からの謝意を待っていた。
杉本瑠璃はただまばたきをして、驚いたような様子で言った。「良き市民は警察に協力するものではありませんか?感謝するなら、橋本警官があなたの協力に感謝すべきでしょう」
おそらく杉本瑠璃の皮肉に慣れていたのか、今回の羽田和彦は怒らず、ただ無奈気に首を振りながら、杉本瑠璃を輝く目で見つめた。
杉本瑠璃は目を細めて羽田和彦を見つめた。
【三島様とこの杉本瑠璃は一体どんな関係なんだ。様子を探れないのが本当にもどかしい】
杉本瑠璃は眉を少し上げた。三島様?
この呼び方は、とても耳慣れている。
もしかして...以前師匠が話していた三島様と同じ人物なのだろうか?
そんな偶然があるのだろうか!
思わず、杉本瑠璃は再び目を上げ、二階のガラス窓をまっすぐ見つめた。心の中で少し残念に思った。
転生した後、透視能力が付いていれば、あのガラス窓の向こうの人を見ることができたのに。
「何を見てるんだ、目が据わってるぞ」
羽田和彦は片手で杉本瑠璃の目の前で振って、彼女の視線を遮った。
「何でもないわ。五百万円のことを忘れないでね。私は先に帰るわ」