「お父様、お母様、慌てないでください。この借用書は盗んだわけでも奪ったわけでもありません。石川賢明から五百万円で買い戻したんです。これで杉本家の借金は完済されました」
杉本瑠璃は辛抱強く説明し、今日起こったことを大まかに話しましたが、羽田和彦のことや後の警察の件は省略しました。
杉本お父様とお母様は話を聞いて混乱し、複雑な心境でした。
杉本お母様は翡翠の原石取引についてよく知らず、「賭け」という言葉を聞いただけで不安になり、主に娘が騙されることを心配していました。
「蒼ちゃん、お母さんの言うことを聞きなさい。これからはそういう原石取引の場所には行かないほうがいいわ。若い女の子一人では危険よ」
杉本瑠璃は母親に魚の切り身を取り分けてから言いました。「お母様、原石取引はあなたの知っているギャンブルとは違います。私も単に興味本位で見に行っただけで、偶然一つの原石を買ったら、それを開いたら出てきた翡翠が私たちの危機を救ってくれたんです。私は、人には必ず道があり、善良な心を持っていれば運も良くなると思います」
杉本お母様はこういった考えをとても信じていて、あるいは少し迷信深いところがあり、娘の言葉を聞いて、きっと天が見かねて彼らを助けようとしたのだと思うようになりました。
杉本お父様は原石取引について聞いたことがありました。彼らの業界では、多くの人が儲かる情報に関心を持っていたのです。
「以前から翡翠の原石ビジネスは儲かると聞いていたが、私は木材を扱っていて、翡翠の原石についても詳しくないから、手を出さなかったんだ。今考えると、翡翠の原石ビジネスには確かに可能性がある。もちろん、一番の才能は私の娘だ。こんなに良い目利きができるなんて、宝物を見つけたようなものだ!」
杉本お母様も何度もうなずき、久しぶりに笑顔を見せました。杉本瑠璃は、二人も深く安堵したことがわかりました。
家の借金が、ついに解決したのです。
杉本お父様とお母様の気持ちに比べて、実は杉本瑠璃が最も深い感慨を抱いていました。というのも、かつて杉本お父様とお母様が相次いで亡くなり、その後はすべての借金を杉本瑠璃が背負っていたからです。
あの暗闇の中で、毎日倹約して借金を返済していた日々が、ついに完全に彼女から遠ざかったのです。