「最近しばらくの間、私はY市に滞在しているので、いつでも治療に来てくれて構いません」
三島悠羽は名刺を杉本瑠璃に渡しながら、「帝国ホテルに入る際、この名刺を見せれば、自然と誰かが案内してくれます。次にお会いする時には、杉本さんではなく杉本先生と呼べるようになることを願っています」
三島悠羽は杉本瑠璃に微笑みかけた。それは初めて会った時のように、再び謙虚な紳士の、温和で優雅な姿に戻り、その笑顔には春の陽気が満ち溢れていた。
しかし今の杉本瑠璃は、もはや三島悠羽を単なる温厚で無害な人物とは考えておらず、むしろ危険な印象を抱くようになっていた。
とはいえ、吉川先生や羽田和彦のように彼を恐れてはいなかった。杉本瑠璃は本質的にそういう性格で、困難に立ち向かうほど強くなるタイプだった。そうでなければ、巨額の借金を背負った後も、自分の色を売って金を稼ぐことを拒み、命を賭けた薬物実験のような仕事を選ぶことはなかっただろう。
三島悠羽から名刺を受け取り、一目見ると、名刺には暗黒色の花模様と、暗金色で「三島悠羽」という文字だけが刻まれており、非常にシンプルでありながら、決して単純ではなかった。
詳しい人が見れば驚嘆することだろう。この暗黒色の花模様は国際的なトップデザイナーの手によるもので、暗金色の名前も特殊な材質で刻印されており、インクではなく、金粉を何度も精製して一点一点嵌め込んだものだった。
この名前一つだけでも、どれほどの最高級の金が使用されているか分からないほどだった。
控えめでありながら贅沢さを極めた逸品だった。
杉本瑠璃が再び目を上げると、その瞳の輝きは非常に眩しく、三島悠羽の目を見張らせ、彼の唇の端が美しい弧を描いた。
名刺は軽いものの、杉本瑠璃はそれを手に持つと重みを感じた。「はい」
たった一言だが、それもまた千斤の重みを持っていた。
少し考えてから、杉本瑠璃はやはり一言尋ねた。「私をあなたの専属医師にしたいとおっしゃいましたが、あなたの病状について知りたいのですが」
帰ってから師匠に聞くこともできるが、杉本瑠璃は当事者から直接情報を得る方が最も的確だと考えた。
「病状については、今のところ、ただ体が少し弱っているだけです。原因については...私も答えを探しているところです」