杉本瑠璃は直接家に帰らず、薬草堂に向かった。週末の時間を有効活用して、師匠から医術をもっと学ぼうと思ったのだ。
「こんな遅くに来るなんて、今起きたところじゃないだろうな!」
吉川先生は朝早くから杉本瑠璃を待っていたが、彼女が来たのは昼近くになってからだった。待ちくたびれて眠くなり、あくびを連発していた。
杉本瑠璃が入ってきて、吉川先生を見つめた。その眼差しは「私にはあなたの心が見透かせる」と言っているようだった。
吉川先生は不思議そうな顔をして首を傾げていると、瑠璃が言った。「午前中は薬を届けに行っていました。でも三島様は飲まなかったんですけど。」
吉川先生は驚いて目を丸くし、立ち上がって興味津々に尋ねた。「薬を届けに行ったのか?どうだった?あいつ、お前に何かしなかっただろうな?早く師匠に話してごらん。」
【ふむふむ、この二人が火星と地球のように衝突したら、面白いことになりそうだな。小狐と老狐の対決、きっと見応えがあるはずだ!】
杉本瑠璃は吉川先生の心の声を読み取り、顔が曇った。
やはり吉川先生は意図的に三島悠羽のことを何も教えなかったのだ。二人のどちらが優れているか、どちらが賢いか確かめたかったのだろう。
「まあ、特に何もありませんでした。ただ、三島様が先生をクビにしただけです。」
えっ?
なんだって?
もしかして年のせいで耳が遠くなったのか?
今、杉本瑠璃が三島悠羽に解雇されたと言ったように聞こえたが!
「あいつ、気が狂ったのか。あの忌々しい悠羽くん、いつも人を心配させやがって。今度は源様のやつがまた毎日うるさく言いに来るぞ!いかん、いかん、私が直接行かなければ。」
吉川先生は今になって慌て始めた。最初から見物しようなどと思わずに、瑠璃を行かせなければよかった。
源様が毎日愚痴りに来ることを想像すると、頭が二つに割れそうだった。
杉本瑠璃は忙しそうに支度を始めた吉川先生を見て、ようやくゆっくりと付け加えた。「でも...三島様は私を専属医師にすると言いました。だから、私が独り立ちできるかどうかは、師匠次第です。」
ガーン!
吉川先生は自分の心が餃子の具のように粉々に砕けるのを感じた。
弟子に仕事を奪われたからではなく、弟子にまんまと騙されたと気付いたからだ。