第32章 足止められた

土曜日になると、杉本瑠璃は吉川先生からもらった薬草を持って、直接帝国ホテルへ向かった。

帝国ホテル

東京都でも非常に有名なホテルで、控えめな贅沢さを売りにしていた。現代の豪華ホテルと比べると少し見劣りするかもしれないが、96年当時では人々の目を見張らせるようなホテルだった。

杉本瑠璃でさえ、帝国ホテルには来たことがなかった。

杉本家は以前、それなりの裕福な商人だったが、せいぜいローズパレスホテルのような級のホテルまでで、帝国ホテルなど、想像すらできなかった。

多くの人が疑問に思っていた。果たして帝国ホテルに泊まる人がいるのだろうか?

答えはもちろん、いる!

当然いるはずだ!

一般庶民には知られていない、身分の高い人々こそが、ここに泊まる資格があるのだ。

普通の小金持ちなら、夢の中で考えるくらいがせいぜいだろう。