土曜日になると、杉本瑠璃は吉川先生からもらった薬草を持って、直接帝国ホテルへ向かった。
帝国ホテル
東京都でも非常に有名なホテルで、控えめな贅沢さを売りにしていた。現代の豪華ホテルと比べると少し見劣りするかもしれないが、96年当時では人々の目を見張らせるようなホテルだった。
杉本瑠璃でさえ、帝国ホテルには来たことがなかった。
杉本家は以前、それなりの裕福な商人だったが、せいぜいローズパレスホテルのような級のホテルまでで、帝国ホテルなど、想像すらできなかった。
多くの人が疑問に思っていた。果たして帝国ホテルに泊まる人がいるのだろうか?
答えはもちろん、いる!
当然いるはずだ!
一般庶民には知られていない、身分の高い人々こそが、ここに泊まる資格があるのだ。
普通の小金持ちなら、夢の中で考えるくらいがせいぜいだろう。
杉本瑠璃は帝国ホテルの敷地内に入っただけで、まだホテルの入り口にも着かないうちに、外周で止められてしまった。
「申し訳ありませんが、ご予約はありますか?」
イケメンで清潔感のある若い男性が杉本瑠璃の行く手を遮った。
彼は帝国ホテルのロゴ入りの制服を着て、背筋をピンと伸ばし、表情も適度で、傲慢でも卑屈でもない感じだった。
杉本瑠璃は帝国ホテルに来たことがなく、ここのルールを知らなかったので、首を振るしかなかった。
「予約はありません。人を探しに来たんです。」
イケメン従業員はすぐに言った。「では、どちらのお部屋の方をお探しですか?ご連絡を取らせていただきます。」
「1208号室の三島という方です。」
杉本瑠璃は三島様の名前を知らなかったので、姓だけを告げた。
しかしイケメン従業員は杉本瑠璃の言葉を聞いて、一瞬固まってしまった。まるで信じられないことを聞いたかのように、目を瞬かせながら杉本瑠璃を見つめた。
そんな風に見つめられて、杉本瑠璃は眉をひそめた。「連絡を取ってくれるんじゃないんですか?」
イケメン従業員はすぐに我に返り、躊躇いながら尋ねた。「1208号室の三島さんとお会いになりたいということで間違いありませんか?三島さんは本日の来客予定をお知らせになっていませんが。」