誘拐犯たちは、この二人がこんなに素直だとは思わなかったので、彼らをあまり苦しめることはしなかった。
今の彼らの任務は、とりあえず二人を連れて行くことだった。
杉本瑠璃は三島悠羽の車椅子を押しながら、黒いワゴン車の横まで行くと、誘拐犯の一人が悠羽を担ごうとした。
三島悠羽は軽く手を上げただけで、皆の前で立ち上がり、長い脚で車内に乗り込んだ。
「足が不自由じゃないのに、なんで車椅子に乗ってるんだ!」
手下の一号が驚いて言うと、リーダーは彼を睨みつけた。「余計なことを言うな。足が不自由じゃないなら、むしろ良かったじゃないか。俺たちが苦労しなくて済む。行くぞ。」
杉本瑠璃も車に乗り込み、三島悠羽の隣に座った。三島悠羽の車椅子は置き去りにされ、寂しげにその場に残された。
この誘拐犯たちは、おそらく初めてこのような仕事をするのか、杉本瑠璃と三島悠羽の目隠しをすることも忘れていた。