第53章 一期一会

しばらくして、斎藤きくこは杉本瑠璃の澄んだ瞳を見つめ、とても確信を持って頷き、躊躇なく言った。「うん、すっきりした!」

なぜだか分からないが、斎藤きくこがそう言うと、杉本瑠璃と彼女の間に言葉では表せない親近感が生まれ、二人は目を合わせて微笑み、目に見えない何かが二人の間を流れた。

斎藤きくこは、見知らぬ人と初対面でこれほど気が合うことがあるとは知らなかった。

杉本瑠璃のこの一蹴りは、斎藤きくこの長年の心の中での最大の願いだった。ただ残念なことに、現実の制約から、彼女は本当に蹴りを入れる勇気がなかった。

そして今日、杉本瑠璃が斎藤つきこを蹴り飛ばしたことは、完全に彼女のその願いを叶えてくれたのだ。

見物していた生徒たちは単なる物見遊山で、杉本瑠璃も斎藤きくこも共に問題を起こしたことは明らかだった。紅葉学園の門前で喧嘩をするなんて、まるで頭がどうかしているようだった。

人々は次々と散っていき、誰も斎藤つきこを助け起こそうとしなかった。皆トラブルに巻き込まれたくなかったし、見知らぬ人のためにリスクを冒す必要はなかった。

「私、斎藤きくこっていうの。あなたは?」

斎藤きくこは非常に気さくに声をかけた。

「杉本瑠璃よ」

杉本瑠璃は笑顔で答え、斎藤きくこを少しも見下すような様子はなかった。斎藤きくこは自分が恥ずかしい姿をしていることは分かっていたが、目の前の杉本瑠璃は少しも彼女を嫌がる様子がなく、それは斎藤きくこの心を少なからず慰めた。

桐生誠一は二人を見て、そして斎藤きくこにも非常に親しみやすく言った。「僕は桐生誠一です。瑠璃の隣の席の者です。よろしく」

桐生誠一が率先して手を差し出すと、斎藤きくこは少し驚いただけで、桐生誠一と握手を交わし、少しも小心者な感じはなかった。

「こちらこそ!あなたたちも面接に来たの?」

斎藤きくこが積極的に会話を始め、三人の間にも気まずさはなく、とても快適な会話が続いた。

桐生誠一はちょっと不思議に思った。杉本瑠璃が斎藤きくこを知っていたから助けに入ったのかと思っていたが、今見ると、二人は知り合いではないようだった。

これは少し奇妙だった。杉本瑠璃がこんなに積極的で親切になったのはいつからだろう?

「うん、私たちも面接に来たの。そうそう、あそこで倒れている人のことは、どうする?」