そこで、杉本瑠璃は遠慮なく、斎藤きくこがずっとやりたかったけどできなかったことをやってのけた。
斎藤つきこという邪悪な女を蹴り飛ばしたのだ。
斎藤きくこの話によると、斎藤つきこがいなければ、彼女は薬の実験台にされることもなかったという。きくちゃんは精神力が強かったからこそ、打ちのめされずに済んだのだ。
天が再び斎藤きくこと出会わせてくれたからには、杉本瑠璃は当然彼女を助けなければならない。理由は単純で、斎藤きくこも彼女を助けてくれたことがあるからだ。
杉本瑠璃は歩き続け、文化館の歴史室にたどり着いた。
そこに着くと、他の人々も待っているのが見えた。人は多くなかったが、雰囲気は緊張感に満ちていた。
知り合いらしい二人の女の子が、小声で話し合っていた。
「りか、私たちの合格確率はどのくらいだと思う?さっき出てきた学生たちは、みんな元気がなさそうだったわ。一人に中で何を聞かれたのか尋ねたけど、教えてくれなかった。ちょっと緊張してきちゃった」
「あいこ、心配しないで。あなたはダンスが上手いじゃない。三歳からバレエを習ってきたんだもの。こんな優雅なダンスなら、学校の先生方もきっと気に入ってくれるわ。私なんて絵を描くだけだから、むしろ私の方が心配よ」
「りか、謙遜しすぎよ。あなたの絵なら私も見たことあるけど、いわゆる画家たちよりも素晴らしいわ。私はあなたなら問題ないと思う。きっと選ばれるはずよ」
杉本瑠璃はその場に立ち、二人が互いを褒め合うのを聞いていた。彼女たちが本当に相手のことを良いと思っているのか、それとも単なるお世辞なのかは深く追求しなかった。
すぐに二人の女の子も順番に歴史室に入っていった。二人が出てきた時、表情は暗く、りかという子は直接泣き出してしまい、とても悲惨な様子だった。
杉本瑠璃は少し興味を持った。面接官は一体何を言ったのか、学生たちがみんなこんな表情で出てくるなんて。
おそらく、これらの学生たちの精神的な耐性が低すぎるのだろう。
杉本瑠璃の番になった時、面接に失敗した何人かがまだ残っていた。おそらく誰か合格する人がいるかどうか見たかったのだろう。
杉本瑠璃はそれほど気にせず、服装を整えて歴史室に入った。