杉本瑠璃は残念そうに頷き、先生の言葉に同意した。
「人を殴ることが才能じゃないなら、人を救うことは才能として認められるでしょう」
杉本瑠璃は前から考えていた。読心術や超強力な記憶力が個人の才能として認められないのなら、吉川先生から学んだ医術なら、きっと通用するはずだと。
結局のところ、紅葉学園が求める個人の才能は、そこまで厳しいものではない。彼女は先生の心を読んで分かったのだが、紅葉学園が最初に生徒の心理素質を試験するのは、それを重視しているからだった。
才能に関しては、あれば紅葉学園が極めて優秀な人材に育て上げることができる。
ようやく、先生たちの杉本瑠璃を見る目が普通になってきた。
「どうやって人を救うの?説明してください」
杉本瑠璃は立ち上がり、一番端の先生のところへ歩み寄り、優しく微笑んで言った。「先生、手を出していただけますか?」
端の先生は意味が分からなかったが、協力して手を差し出した。杉本瑠璃は白い指で先生の脈を軽く取り、それから反対の手に変えて脈を診た後、先生に微笑んで「ありがとうございます」と言った。
背筋を伸ばして立ち、先生たちの好奇心に満ちた視線の中でゆっくりと話し始めた。
「渡辺先生、心臓の具合があまり良くないようですね。もし私の見立てが間違っていなければ、僧帽弁閉鎖不全で、血液の逆流が起きやすい状態です。ただ、幸い重症ではないので、今すぐ手術の必要はありませんが、養生に気をつけて、無理は禁物です。定期的に病院で検査を受けることをお勧めします」
杉本瑠璃は先生の体調について説明し、注意すべき点も指摘した。その先生は目を丸くして聞いていた。
彼の体調のことは、本人と医師しか知らなかった。家族に心配をかけたくないので、誰にも話していなかったのだ。
以前、胸の痛みで何度も病院で検査を受けて、やっと診断が確定したのだった。
それなのに杉本瑠璃は脈を触っただけで、彼の病状を的確に言い当てた。本当に驚くべきことだった。
「えっ?渡辺先生、心臓が悪いんですか?聞いたことないですけど?」
他の先生たちは驚いて、すぐに渡辺先生に尋ねた。
渡辺先生は少し困ったように笑って、「最近分かったばかりなんです。何度も検査を重ねて、やっと結果が出たところで、家族にもまだ言っていないし、学校にも報告していません」