杉本瑠璃は歴史館から出てきたが、入る時と同じように少しも落ち込んだ様子はなく、外で待っていた数人の学生たちは興味深そうに見ていた。
りかという女子学生が杉本瑠璃の方に歩み寄り、「あの、合格できましたか?」と尋ねた。
杉本瑠璃はりかを一瞥して、「合格かどうかは通知を待つしかありません」と答えた。
りかは少し落胆した様子で、「私たちの合格の可能性は低そうですね。他の場所では面接官が何らかのヒントを出すと聞いていたのに」とつぶやいた。
杉本瑠璃がすぐに合格通知を受けなかったことから、これ以上の情報は得られないと判断したりかは、もう杉本瑠璃に構わず、次の人が出てくるのを待っていた。
杉本瑠璃は気にせず、ただりかのこの行動が無知だと感じた。
他人が合格したところで、自分とは何の関係もないし、ここで待っているのは時間の無駄だと思った。
杉本瑠璃が先に立ち去ろうとしたとき、道で思いがけず斎藤つきこと出くわした。斎藤つきこも、ここで杉本瑠璃に会うとは思っていなかった。
周りに人がいない今、斎藤つきこは杉本瑠璃が再び自分に手を出すのではないかと本当に心配していた。
文化館に向かって小走りに逃げていく斎藤つきこを見て、杉本瑠璃は冷笑を浮かべた。同時に斎藤きくこのことを気の毒に思った。強い者には弱く、弱い者には強い斎藤つきこのような人物にいじめられて実験台にされるなんて、斎藤きくこらしくない。
でも幸いなことに、自分は転生し、斎藤きくことも再会できた。天は公平なのだと思った。
杉本瑠璃は少し考えてから、入口で桐生誠一と斎藤きくこを待つことにした。斎藤きくこが先に戻ってきて、面接は上手くいったようだった。桐生誠一は遅めに戻ってきたが、リラックスした表情を見る限り、問題なさそうだった。
「合格できた?」桐生誠一は興奮気味に尋ねた。
斎藤きくこは、こんなに熱心な桐生誠一を見て、少し顔を赤らめた。まだ思春期だし、以前は斎藤つきこがいたため、男子は皆彼女の周りに集まり、自分はほとんど存在感がなかった。
そして桐生誠一は初めて自分から話しかけてくれた男子で、しかもイケメンだったので、斎藤きくこが恥ずかしがるのは当然だった。
「私は...たぶん合格です。先生がヒントをくれました」
斎藤きくこは合格したのだ。