少女は長い間悩んだ表情を浮かべ、周りを見回してから言った。「他の場所はここほど良い位置じゃないの。ここなら全景が見えるし、私はここが好きなの」
桐生誠一はそんなことは気にもせず、目を転がして言った。「僕だってピラミッドが好きだけど、だからって自分をミイラにしてまで入りたいとは思わないよ」
プッ!
斎藤きくこと杉本瑠璃は笑い出した。瑠璃は桐生誠一の話術の凄さを目の当たりにした。さすが敏腕弁護士だと納得した。
少女は一瞬呆然としたように見えた。瑠璃は少女が怒り出すかと思ったが、意外にも少女もプッと笑い出し、不機嫌な様子は見せなかった。
「ピラミッドが好きなの?入りたい?私が案内できるわよ。ミイラになる必要なんてないわ」
瑠璃と斎藤きくこは目を合わせ、呆然とする桐生誠一を見て、大笑いした。