「三島様との関係を考えれば、こんなことを私に聞く必要はないでしょう」
杉本瑠璃は、あの日羽田和彦が1208号室に連れて行った後、完全に面白がって見ていたことを覚えていた。
結果的に策が裏目に出て、彼女は三島様に招かれて中に入り、彼は外に閉め出されてしまった。
羽田和彦は切れ長の目を細め、限りない色気を漂わせた。周りの女性たちは目を奪われていたが、杉本瑠璃だけは冷静さを保っていた。
「蒼ちゃん、私は気づいたんだけど...あなたの目は少し悪いか、それとも美的センスがないのかもしれないね」
杉本瑠璃は笑顔で応じ、ひるむことなくカップの温かい飲み物を一口飲んだ。「羽田様の言外の意味は、私があなたの美貌に魅了されなかったから、目が悪いか、美的センスがないということですね」
「蒼ちゃんは本当に賢いね。でも賢い女性は好かれにくい、少し抜けている方が愛されるんだよ」
杉本瑠璃は肩をすくめた。「次世代のために、私はやはり賢い方がいいと思います。もし私の子供たちが羽田様のような人に出会って夢中になってしまったら、本当に泣きたくなりますから」
羽田和彦の目尻の弧が深くなり、杉本瑠璃をじっと見つめた。しばらくして、椅子に背をもたせかけ、「つまらないな。蒼ちゃん、君は三島悠羽のやつと同じで、面白みがないよ」とぼやいた。
杉本瑠璃は微笑んで、何も言わなかった。
しかし三島悠羽のことを思い出すと、昨日彼が去る時の表情があまり良くなかったことが気になった。今はどうしているだろうか。
私人医師として、彼の様子を見に行くべきだろうか。
「蒼ちゃん、何を考えているの?そんなに夢中で...もしかして三島悠羽のこと?」
羽田和彦は意地の悪い笑みを浮かべ、目には暗示的な色が宿っていた。杉本瑠璃は一瞥して「羽田様はお暇なんですか?」と尋ねた。
「冗談じゃない、この僕が羽田グループの経営を任されているんだ。暇なわけがないだろう」
「そうですか?」杉本瑠璃は眉を上げた。「そんなにお忙しい羽田様が、噂話をする時間があるんですね?羽田様はゆっくりしていてください。私は行きますから」
羽田和彦は彼女に会うたびに色々と探りを入れてくるので、杉本瑠璃はつまらなくなり、もう話をするのをやめた。
立ち上がると、桐生誠一たち三人の方へ歩き出した。羽田和彦も一緒についてきた。