とにかく杉本瑠璃が来たのを見て、桐生誠一は安心した。
二人は一緒に紅葉学園の門に向かって歩き始めた。桐生誠一は自分が合格できる自信があるようだったが、杉本瑠璃のことを少し心配していた。
「あのさ...どんな才能を見せるか決めた?」
杉本瑠璃は肩をすくめ、表情は余裕があり、明らかに心当たりがあるようだった。桐生誠一はようやく安心し、少し躊躇した後、また口を開いた。「まだ言ってなかったんだけど、実は...安藤颯も面接に来るんだ。」
安藤颯と杉本瑠璃、そして石川静香の間の出来事は、彼が学校にあまり来なくても、噂は聞いていた。
「安藤颯?」
杉本瑠璃は少し驚いた様子で、桐生誠一が頷くと、杉本瑠璃は軽く笑い、皮肉めいた口調で言った。「あいつに紅葉学園の面接に来るような才能があったの?」
桐生誠一は一瞬戸惑った。彼はずっと杉本瑠璃が安藤颯のことを好きだと思っていた。安藤颯は確かに学校一のイケメンで、以前は杉本瑠璃と安藤颯は仲が良かった。ただ、後に杉本瑠璃の家に何かあってから、二人の関係は変わってしまった。
今、安藤颯もここに面接に来るということで、二人が出会ったら、杉本瑠璃は気まずい思いをするのではないかと心配だった。
そして杉本瑠璃のさっきの軽蔑的な口調に、桐生誠一は杉本瑠璃がまだ安藤颯のことを引きずっているのだと誤解してしまった。気にかけているからこそ、軽蔑的な態度で感情を隠しているのだと。
しかし桐生誠一が知らないのは、もし杉本瑠璃が転生していなければ、確かに安藤颯に会った時に気まずさを感じたかもしれない。だが転生後の彼女が再び安藤颯に会っても、軽蔑以外の感情は既に消え去っていた。
安藤颯のような人物にそれほどの感情を費やす必要はない、本当に価値がないのだ。
桐生誠一は杉本瑠璃がこれ以上話したくないのを察して、話題を変えることにした。
「そうだ、忘れてた。家族は送ってこなかったよね?」
桐生誠一は突然重要なことを思い出し、杉本瑠璃に注意するのを忘れていたことに気付いた。
杉本瑠璃は首を振って、「ないわ」と答えた。