彼は先ほど、杉本瑠璃が離れた時に、特に杉本瑠璃が選んだ原石を見に行った。一つは品質が良く、翡翠が出そうな感じで、もう一つは普通の品質で、翡翠が出そうにない。
そしてもう一つは更に悪く、品質が驚くほど悪い。素人しか選ばないような原石だった。
「この三つとも君が選んだものだし、どれを選んでも良いと言ったのだから、私が一つ選ばせてもらおうか。それが公平だと思うが、どうだろう?」
ふふ、杉本瑠璃は鈴木智也を横目で見た。この男の考えは顔に書いてあるようなもので、読心をする必要もなく、何を考えているか分かった。
しかし、自ら罠に飛び込もうとする人を止める必要もないだろう。
「どうぞ、構いません」
周りの人々はそれを聞いて、杉本瑠璃という子は本当に馬鹿だと思った。こんな浅はかな考えで勝負するなんて、ふざけているとしか思えない。
あまりにも子供じみている。
鈴木智也は三つの原石を見た。選んでいるように見えたが、実際には既に決めていた。
品質の良い原石は当然選べない。そして、極端に品質の悪い原石も選ばなかった。
もしそれを選んだら、周りの人から子供いじめだと非難されるかもしれない。勝っても面白くない。
むしろ普通の品質の原石を選んだ方が、不公平だと思われないだろう。
「これにしよう」
鈴木智也は見せかけるように普通の品質の原石を指さした。案の定、周りの人々は彼が不公平だとは思わなかった。
むしろ、鈴木智也はいい人だと思われた。品質の悪い原石を選ばなかったからだ。
周りの人々の視線を見て、鈴木智也は少し浮かれた気分になった。彼は誰にも文句を言わせないようにするつもりだった。
杉本瑠璃は意味深な笑みを浮かべた。予想通りの展開だった。
しかし、これはむしろ良かった。後でもっと面白くなるはずだ。
「はい、これで。店主さん、これらの原石を原石切りの場所まで運んでください。私の残りの二つの原石も一緒に、全部切りたいと思います」
店主は快く人を呼び、数人の屈強な男たちが協力して原石を運搬車に載せ、原石切りの場所まで運んだ。
その場で原石を切ることになっていたので、杉本瑠璃と鈴木智也はその場で代金を支払った。
原石切りの場所に着くと、ちょうど二つの空いた場所が隣り合わせにあり、まるで彼らのために用意されていたかのようだった。