翌日、山田ひろしは杉本瑠璃と杉本律人を取引現場に連れて行った。全員が胸章を付けており、これが入場の証明書だった。
杉本瑠璃と杉本律人は青い胸章を付けており、山田ひろしは緑の胸章を付けていた。杉本瑠璃は赤い胸章を付けている人も見かけた。
尋ねてみると、これらの色は翡翠業界での経験年数を表していることが分かった。杉本瑠璃と杉本律人の青い胸章は、翡翠取引の経験が浅いことを示し、白い胸章は初めての参加者を表していた。
山田ひろしの緑の胸章は10年の経験を、赤い胸章は20年の経験を示していた。
この業界に入らなければ、杉本瑠璃はこのようなことを知ることはなかっただろう。たとえ多くの本を読んでも、知り得なかったことだ。
だからこそ、百聞は一見に如かずという言葉は、とても理にかなっているのだ。
人生経験は、読書量よりもはるかに実用的なのだ。
会場に入ってみると、白い胸章をつけている人はほとんどおらず、青い胸章も基本的に少なかった。
一目見渡すと、緑の胸章が多く、赤い胸章も少なくなかった。彼女と父親のような青い胸章の持ち主は、すぐに人々の注目を集めることになった。
周りの人々の目には驚きの色が浮かんでいたが、幸いにも軽蔑的な視線はなく、ただ経験の浅い人がこのような場所に来るのは相応しくないと感じているようだった。
しかし、大会がこのようなランク分けを設けている以上、彼らにもここに来る資格があるということだ。
これはむしろ良いことで、青い胸章の人が多く来れば、それだけ自分との競争相手が減るということになる。
ここで原石を選ぶには、豊富な経験が必要だ。初心者が良い原石を見つける確率は極めて低く、それは即ち自分との競争相手が大幅に減ることを意味している。
これらは全て山田ひろしから聞いた話で、彼は話す際に少し気まずそうな表情を見せ、杉本瑠璃と杉本律人の自尊心を傷つけることを心配していた。
幸いにも、杉本瑠璃と杉本律人は共に見栄を張るタイプではなく、二人とも頷くだけで、山田ひろしが青い胸章を与えたことを咎めることはなかった。
山田ひろしは会場に入ると、すぐには原石の選定に取り掛からず、杉本瑠璃と杉本律人を連れて会場内を案内し、この場所について説明した。