「でも何?」
山口健太は急いで尋ねた。今は緊急事態で、この少女が方法を知っていると言い、杉本瑠璃の基本的な応急処置を見る限り、彼女はある程度信頼できそうだった。
杉本瑠璃も躊躇する余裕はなかった。山口小百合の状態が良くなかったからだ。
「私は医者ではありません。ただ偶然、喘息の治療法を少し知っているだけです。これまで試したことがないので、自信はありません」
山口健太はわずかな希望を抱いていたが、杉本瑠璃の言葉を聞いて、完全に絶望した。
杉本瑠璃が医術を知っていると思っていたが、ただ知識があるだけで、実際に治療したことはないと分かった。
大切な娘を、見知らぬ人に治療させるなんて、とても危険だと思った。
「これは...恐らく...」
山口健太が躊躇するのも無理はない。誰でも躊躇うだろう。
杉本瑠璃は冷静に言った。「私の医術の修行期間は短いですが、師匠の医術は非常に優れています。私は師匠の十分の一ほどの腕前もありませんが、一、二割は習得しています。本来なら師匠は軽々しく人を治療するなと言っていましたが、今は特別な状況です。緊急時には臨機応変に対応すべきです。治療するかどうかはあなたの判断次第です」
実際、杉本瑠璃もリスクを負っていた。たとえ山口健太が同意したとしても、何か問題が起きれば、彼女の責任は免れない。
杉本瑠璃が言ったように、緊急時には臨機応変な対応が必要で、細かいことは気にしていられない。
それに、杉本瑠璃は自分の能力にある程度の自信があった。
山口健太は深く息を吸い、娘の状態が悪化していくのを見て、歯を食いしばりながら杉本瑠璃を見た。「どのくらいの自信がある?」
「八十パーセントです」
八十パーセントの成功率は、かなり高い。
どんなに優れた医者でも、どんな病気に対しても、百パーセントの確信は持てない。
「よし、どうすればいい?」
藁にもすがる思いだった。今は他に方法がなく、娘の状態は危機的だった。他に選択肢がない以上、リスクを取るしかなかった。
八十パーセントの確率なら、賭けてみる価値はある。
杉本瑠璃もこれ以上言葉を費やさず、手首から針包みを取り出した。いつも針包みを持ち歩く習慣があって良かった。そうでなければ対処のしようがなかった。