「なんだって?高氷種だと!」
「田中さん、見間違いじゃないでしょうね。早く見せてください」
「すごいぞ、これは興奮するわ。私の心臓が!高氷種の艶陽グリーン、もし傷がなければ、本当に銀両の価値があるぞ」
「ふふ、今回は見どころがありますね。ますます面白くなってきた。二人のどちらが勝つのかな」
「それはわからないよ。この高氷種艶陽グリーンはまだ完全に切り出されていないからね。中がどれくらいの大きさかわからない。小さな欠片だけなら、価値はないよ。だから結果は、田中さんが全部切り出すまでわからないんだ」
当事者たちがまだ何も言わないうちに、周りの人々が議論を始め、とても賑やかに話し合っていた。
鈴木智也は全身がふらつき、後ろにいた二人の手下が支えなければ、恥をかくところだった。
「智也さん、慌てないでください。彼女の原石を見てください。きっと見かけだけですよ。こういうことはよくあります。後で彼女も空騒ぎだったと分かるはずです」
「そうですよ、智也さん。あなたの氷種翠緑翡翠は大きさも十分あるんです。彼女のを恐れる必要はありません」
二人の言葉を聞いて、鈴木智也はようやく少し落ち着きを取り戻したが、目は田中さんの手にある原石から離れず、まばたきすら出来なかった。
翡翠を切り出した田中さんも興奮していて、手の動きは丁寧になりながらも、スピードは落ちなかった。
しばらくすると、男性の拳二つ分ほどの大きさの丸い翡翠が完全に切り出された。
翡翠全体が透き通るように輝き、水気が豊富で、その艶陽グリーンの色合いは人々の目を楽しませ、魅了した。
田中さんが翡翠全体を杉本瑠璃に渡したとき、杉本瑠璃はその手触りの温かさと潤いを感じ、自然な質感と圧倒的な艶陽グリーンの輝きに満ちていた。
「胭脂雪瘦薰沈水、翡翠盤高走夜光」という言葉があるのも納得だった。杉本瑠璃は、どんな修飾語を使っても翡翠の魅力を十分に表現することはできないと感じた。
「お嬢さん、この翡翠を売っていただけませんか?一億円出します!」
最初に値段を付けたのは、先ほど鈴木智也の翡翠を買おうとした男性だった。この男性の値段提示で、勝敗は一目瞭然となった。
彼は鈴木智也に五千万円を提示したが、杉本瑠璃の翡翠には一億円、二倍の価格を付けたのだ。
「一億一千万円出します。お嬢さん、私に売ってください」