第75章 威風堂々

なぜか、周りの雰囲気も重くなり始め、話す人も少なくなった。皆の視線は田中さんの方に集中し、最後の結果を待っていた。

彼らは杉本瑠璃のこの原石に期待していなかったが、奇跡が起こるかもしれない。人は大逆転を見るのが好きなものだ。

もちろん、噂を聞きつけて駆けつけた人々もいた。ここで勝負があり、氷種、高氷種が出て、さらには珍しい紫翡翠まで出たと聞いて、見に来ないわけにはいかなかった。

山田ひろしと杉本律人も噂を聞きつけて、急いでやって来た。

彼らが予想もしなかったのは、杉本瑠璃と鈴木智也の二人が勝負をしているということだった。

一体...その高氷種と紫翡翠は、誰が出したのだろうか?

二人とも今来たばかりで状況がわからず、お互いを見て首を傾げていた。田中さんが原石切りをしているのを見て、邪魔をしないようにした。もし不注意で田中さんを驚かせて、翡翠を壊してしまったら大変だ。

そこで、周りで見物している人々に尋ねることにした。

「兄弟、ここで何が起こっているんだ?俺たち今来たばかりなんだけど、説明してくれないか?」

山田ひろしは見物している一人に尋ねた。その人は杉本瑠璃と鈴木智也の勝負が始まった時から見ていたので、経緯を一番よく知っていた。

質問されると、その人は身振り手振りを交えながら、臨場感たっぷりに経緯を説明した。

山田ひろしと杉本律人は聞けば聞くほど驚き、最後には言葉を失うほど衝撃を受けた。

つまり、高氷種艶陽グリーンと紫翡翠を出したのは、杉本瑠璃だったということだ!

山田ひろしは興奮を抑えきれなかった。彼は伊藤様の結婚記念日のプレゼントに特別な翡翠を探していたのだが、杉本瑠璃が紫翡翠を出すとは。杉本瑠璃は天から遣わされた救世主のようだった。

一方、杉本律人はその場に立ち尽くし、娘を誇らしげに見つめていた。以前、蒼は三色翡翠を出して家の借金を返済したと言っていた。

今、娘の活躍を目の当たりにして、思わず涙が込み上げてきた。

娘はいつの間にか成長し、家族の支柱になっていたのだ。

こんな娘を持てて、この人生に悔いはない。

昔、妻が妊娠した時、検査で女の子だとわかり、母親は男の子が欲しいからと堕胎を勧めてきた。

今思えば、あの時の自分と妻の決断は本当に正しかった。もし母親の言うことを聞いていたら、今頃本当に後悔していただろう。