「エンペラーグリーン!」
この三文字が口から出た瞬間、その場は騒然となり、皆が思わず前に数歩進み、杉本瑠璃の周りを固く取り囲んだ。
エンペラーグリーン。
それは単なる呼び名ではなく、翡翠の中で最高の存在だった。
しかし、実際の価値は種類によって大きく異なる。
もし運が良ければガラス種のエンペラーグリーンで、一夜にして大金持ちになれる。
他の種類のエンペラーグリーンでも、価値は計り知れない。
「早く早く、どんな種類か見てみよう。田中さん、その手の震えじゃ、研磨続けられるの?交代した方がいい?」
周りの人々は真相を知りたくて田中さんを急かしたが、彼の震える手を見て、心配になった。
田中さんは立ち上がり、ストレッチをして水を一口飲み、汗を拭ってから再び座り、杉本瑠璃を見て言った。「続けられます。」
杉本瑠璃は頷き、田中さんの手が震えているにもかかわらず、彼を交代させなかった。
杉本瑠璃は分かっていた。原石切りの職人にとって、自らの手でエンペラーグリーンを切り出すことは、彼らすべての夢だということを。
杉本瑠璃の信頼を得て、田中さんはより自信を持ち、手の震えも収まった。
「智也さん、焦らないで。さっきも油青の窓が出たけど、結局何もなかったじゃないですか。ただの見せかけですよ。」
取り巻きが鈴木智也を慰めたが、彼はもう何も聞こえていなかった。ただひたすら田中さんの手元の原石を見つめ、心の中で必死に祈っていた。
偽物だ、偽物だ、偽物に違いない!
全員が緊張して、田中さんが少しずつ翡翠を研磨していく様子を見守っていた。
「これは糯種のエンペラーグリーンです!」
ついに種類が判明した。ガラス種という最高級品ではないものの、糯種のエンペラーグリーンでも十分に驚くべき存在だった。
糯種エンペラーグリーンは、繊維状の構造を持ち、透かして見ると質が緻密で、結晶が輝き、緑の糸が浮かんでいるように見える。
この種の糯種エンペラーグリーンは磨いた後の表面に現代の翡翠のような水晶の光沢感がなく、価値は計り知れない。
田中さんが全て切り出し終わると、半メートルの長さと二十数センチの厚みがある糯種エンペラーグリーンの翡翠は、まさに見る者の目を奪うような存在感だった。
この糯種エンペラーグリーンは、数ある翡翠の中で最大かつ最高品質の一つだった。