第78章 彼らを追い出せ!

山田ひろしは少し困惑し、一時的に杉本瑠璃の意図が理解できなかった。

この紫翡翠の価値は、エンペラーグリーンに劣らないことを知っていた。彼のように紫翡翠を切実に必要としている人間にとって、どんなに高額でも購入せざるを得なかった。

しかし杉本瑠璃は、ただの友情のしるしとしてそれを贈ると言い出した。

その言葉は軽々しく聞こえたが、これは並の品物ではなく、高価な紫翡翠だ。簡単に人にあげられるようなものではない。

杉本瑠璃がいきなり紫翡翠を差し出すという大胆な行動に、誰もが驚かずにはいられなかった。

しかし、驚きよりも山田ひろしは感謝の念が強かった。

この紫翡翠があれば、なんとか責務を果たせる。伊藤様の要求を満たせるかどうかは分からないが、何も持っていないよりはましだ。

「これは...申し訳ありませんが、杉本さん、価格を提示していただければ、私が購入させていただきます」

山田ひろしは、このまま受け取るのは杉本瑠璃に甘えすぎだと感じた。この恩を受けたら、どう返せばいいのか分からない。

杉本瑠璃は首を振るだけだった。「この紫翡翠は、贈り物としてのみ差し上げます。売るつもりはありません。意味が違うのです。私は紫翡翠が好きで、お金に困っているわけでもないので、売り買いする気はありません。でも贈り物は別です。山田社長なら、その意味をお分かりいただけると思います」

山田ひろしは今回完全に理解し、少し考えた後、最終的に杉本瑠璃の紫翡翠を受け取ることにした。

「分かりました。杉本さんは潔い方ですね。私も優柔不断な人間ではありません。この紫翡翠は、私からの恩として心に刻んでおきます」

杉本瑠璃は軽く微笑んで、こう言った。「山田社長、お気遣いなく。私はすでに原石をいくつか購入しました。鈴木智也に勝ったとはいえ、山本颯真の配下にはまだ多くの人がいて、彼がどれだけの資金を原石購入に用意しているか分かりません。山田社長は原石の選定に集中された方がいいと思います」

結局のところ、山本颯真と山田ひろしの勝負はより大きな意味を持ち、負けた方は翡翠業界で生きていけなくなる。そして杉本瑠璃は山本颯真の資産に目をつけていた。

今日の鈴木智也との勝負は前菜に過ぎず、本番はこれからだった。