山田ひろしは少し困惑し、一時的に杉本瑠璃の意図が理解できなかった。
この紫翡翠の価値は、エンペラーグリーンに劣らないことを知っていた。彼のように紫翡翠を切実に必要としている人間にとって、どんなに高額でも購入せざるを得なかった。
しかし杉本瑠璃は、ただの友情のしるしとしてそれを贈ると言い出した。
その言葉は軽々しく聞こえたが、これは並の品物ではなく、高価な紫翡翠だ。簡単に人にあげられるようなものではない。
杉本瑠璃がいきなり紫翡翠を差し出すという大胆な行動に、誰もが驚かずにはいられなかった。
しかし、驚きよりも山田ひろしは感謝の念が強かった。
この紫翡翠があれば、なんとか責務を果たせる。伊藤様の要求を満たせるかどうかは分からないが、何も持っていないよりはましだ。
「これは...申し訳ありませんが、杉本さん、価格を提示していただければ、私が購入させていただきます」