第107章 1晩の騒動

「なに?殺人?」

斎藤お父様は驚きの声を上げ、その場で固まってしまった。

斎藤きくこをベッドに縛り付けて、逃げられないようにしただけなのに、どうして殺人罪になるのだろうか。

斎藤つきことその母親も足がガクガクしていた。彼らは典型的な内弱外強で、斎藤きくこに対して散々意地悪をしていたが、警察の前では軟弱者になってしまった。

「その通りです。急いで署に来て供述をしてください。具体的な状況については、被害者の容態が安定し、生命の危険がなくなってから判断します」

この時、杉本瑠璃は紅葉学園の社会的地位を実感した。

もし来た人が紅葉学園の教師でなかったら、もし彼女と斎藤きくこが紅葉学園の生徒でなかったら、事態はこれほどスムーズに解決されず、斎藤家の人々も警察署に連行されることはなかっただろう。

救急車が到着し、救急隊員は動けない斎藤きくこを担架で運び出した。警察官は杉本瑠璃たちに丁寧に言った。「お時間があれば、皆様にも供述をお願いしたいのですが」

杉本瑠璃は少し考えてから答えた。「警察官さん、もう遅い時間ですし、私たちは斎藤きくこの容態が心配なので、先に病院で付き添いたいのです。こうしませんか?私たちは明朝警察署に伺いますので、今晩は彼らの供述だけを取っていただけませんか?」

警察官は少し考え、相手が紅葉学園の教師と生徒で、先に病院に行きたいという気持ちも理解できたので、同意した。そして斎藤家の四人とおばあを一緒に警察署へ連れて行った。

警察も救急車も来て、周囲の住民は皆目を覚ました。事態が大きくなったようで、見物に出てくる人もいた。

斎藤家の人々が出てくるのを見て、みんな様々な噂話をし始めた。

「この家の人たちは何をしたの?警察に捕まるなんて!」

「見たわよ、あの家の可愛がられていない子が何かあったみたいで、担架で運び出されていたわ」

「担架で?何があったの?なぜ担架で運ばれたの?」

「ああ、あなたたち知らないでしょう。私、たまたま見かけたんだけど、あの子の手首が青紫になってて、とても怖かったわ。何があったのかしら」

近所の住民たちが盛んに噂をする中、杉本瑠璃は顔面蒼白の斎藤お父様と、顔を覆い続ける斎藤お母様と斎藤つきこを一瞥し、冷ややかに笑った。ついでに周囲の人々の疑問に答えるように、警察官に向かって意図的に言った。