寮に戻ると、杉本瑠璃は斎藤きくこがまだ帰っていないことに気づいた。もう遅い時間なのに、普段なら彼女はすでに戻っているはずだった。きくこは日用品を取りに家に帰っただけなのに、こんなに遅くまで帰ってこないはずがない。
杉本瑠璃は少し心配になったが、きくこの家の電話番号を知らないので、しばらく待つしかなかった。しかし、深夜12時近くになってもきくこは戻ってこなかった。
杉本瑠璃はじっとしていられなくなり、少し考えてから直接教師寮に向かい、渡辺先生の部屋のドアをノックした。
渡辺先生は寝かけていて、最初は睡眠を邪魔されて不機嫌だったが、ドアを開けると杉本瑠璃だったので、怒りは自然と消えた。
「杉本くん、こんな遅くにどうしたんだ?何か急用か?」
渡辺先生は彼の病気の状態に変化があったのかと思い、少し緊張した様子だった。
杉本瑠璃は急いで説明した。「渡辺先生、個人的なことでお願いがあります。私のルームメイトの斎藤きくこが、今日日用品を取りに家に帰ると言って、すぐ戻ると言っていたのですが、今になっても帰ってきません。心配なのですが、連絡先も分からなくて。先生に調べていただけないでしょうか?」
新入生の件は学生課が管轄しており、その主任は山本竜也だった。杉本瑠璃は彼とトラブルがあったため、たとえ尋ねても教えてもらえないだろう。
あれこれ考えた末、杉本瑠璃は渡辺先生に頼むのが最も確実だと判断した。
渡辺先生は少し驚いたものの、すぐに同意した。「待っていてくれ。山本主任に聞いてみよう。」
渡辺先生も杉本瑠璃と山本竜也の間の確執を知っていた。この程度の手助けなら、喜んでするつもりだった。
それに紅葉学園の生徒がこんな遅くまで帰ってこないのは、教師として気にかける必要があった。
しばらくして、渡辺先生が戻ってきた。表情は良くなかった。山本竜也が何を言ったのかは分からないが、こんな遅い時間に他の教師も寝ていたはずだ。
しかし幸い、渡辺先生は斎藤きくこの家の電話番号を聞き出すことができた。杉本瑠璃は渡辺先生の部屋で電話をかけた。電話は長く鳴り続けた後、ようやく誰かが出た。
相手の口調はあまり良くなかった。「誰だ、こんな真夜中に電話なんかして!」
中年女性の声で、かなり荒々しかった。