「酒を飲まないなら罰を受けることになるぞ!チャンスをやっているんだ。さもなければ警察を呼ぶぞ!」
山本颯真は警察を呼ぶと脅して杉本瑠璃を脅かそうとした。彼から見れば、杉本瑠璃は強がっているだけで、警察を呼べば態度を変えるはずだと思っていた。
「警察?ふむ、それはいい考えだ。山本颯真、お前も案外バカじゃないな」
杉本瑠璃は緊張するどころか、むしろ山本颯真が警察を呼ぶことを支持していた。
杉本悠斗は呆然とした。もし本当に警察が来たら、自分は刑務所に入ることになるのではないか?
ダメだ!
刑務所なんて入れるわけがない!
「兄さん、この娘を見てください。自分の叔父が刑務所に入るのを見過ごすなんて、何とかしてくださいよ。こんな不孝な娘を放っておけません!」
杉本律人は弟の言葉を聞いて、顔が真っ黒になった。自分の娘が不孝?明らかに杉本悠斗が恥知らずなだけだ!
杉本瑠璃は目を細めて、しばらくしてから口を開いた。「警察を呼びたくないようね。そうでなければ、今日まで待っていなかったはず。さあ、この件をどう解決したいの?」
山本颯真は本当に警察沙汰になると思っていたが、杉本瑠璃が折れたと思い込んだ。やはり彼女は子供に過ぎず、そこまでの策略はないと思ったのだ。
「この件を解決したいなら、条件は簡単だ。私から奪った翡翠を返して、Y市から出て行け。そうすれば彼を解放してやる」
「何だと?人を馬鹿にし過ぎている!」
杉本律人が先に激昂した。もし山本颯真の要求が無理のないものなら、賠償金を払って人を救い出そうと考えていた。
しかし山本颯真の要求は途方もないものだった。これで完全に杉本律人の救出する気持ちは消え失せた。
この宝石店は娘が苦労して手に入れたものだ。杉本悠斗のような人間と交換するわけにはいかない。
杉本瑠璃も軽く笑い声を漏らした。「山本颯真、随分と欲張りね。この要求は受け入れられない。というか、あなたのどんな要求も受け入れるつもりはないわ」
山本颯真の顔は真っ黒になり、歯ぎしりしながら言った。「俺を愚弄しているのか!」
自分の要求を受け入れないくせに、条件交渉をしようとするなんて。
ふん、そうなら容赦はしない。
山本颯真は電話を取り出し、警察に通報した。