「まさか、兄さんまでもあの小娘に計算されたの?」
山本颯真は兄の言葉を聞いて、完全に激怒した。山本家の中で、山本竜也は表面上は冷静を装いながら、目立たないように人を陥れるタイプだった。一方、山本颯真は比較的単純で、気に入らない相手には直接手を出すタイプだった。
これまで、山本颯真は山本竜也が自分より優れていると思っていたが、まさか山本竜也までもが杉本瑠璃のような小娘に一杯食わされるとは思わなかった!
山本竜也も顔を曇らせていた。幼い頃から、いつも人を陥れる側だった彼が、今回杉本瑠璃に仕掛けた罠がこれほど巧妙だったにもかかわらず、それでも杉本瑠璃に見破られてしまうとは。
「くっ!あの安藤颯という学生があまりにも愚かで、薬を使いすぎて病院送りにしなければ、こんなに大事にはならなかったのに!しかし、あの杉本瑠璃の手口も侮れないものだった。私が安藤颯に渡した薬の正体まで見抜いていたとは。それに遠野小川のやつ、肝心な時に裏切るなんて。なぜ杉本瑠璃が絡むと全てがこうもうまくいかないんだ!」
山本竜也は杉本瑠璃が非常に縁起が悪いと感じた。まるで山本家の人々に対して特別な天敵のようで、山本颯真も今は解決できない問題を抱えていた。
山本颯真は眉をひそめ、毒蛇のような険しい目つきで言った。「どうやら私たちは杉本瑠璃を甘く見すぎていたようだ。こんなに厄介な存在だと分かっていれば、もっと早く始末すべきだった。」
「お前の方はどうだ?」
山本竜也は深いため息をつき、これまで山本颯真の状況を聞かなかったことを思い出して尋ねた。
この話題を出されて、山本颯真は怒りが収まらず、ソファーに腰を下ろしてタバコに火をつけ、深く一服してから答えた。「杉本悠斗を私的に制裁した件は何とか解決できそうだが、山本宝飾は守れそうにない。誰かがこの件に介入しているらしく、上の連中が誰も助けてくれない。」
山本颯真はこの数日間、奔走し続けていた。やっとのことで人脈を使って、私刑の件は押さえ込むことができたが、山本宝飾の方は、どうしても守ることができなかった。
しかし、彼も杉本悠斗を簡単には済ませなかった。杉本悠斗が杉本瑠璃の叔父なら、今は杉本瑠璃に仕返しができないので、まずは杉本悠斗に仕返しするのも良しとした。