第143章 三島悠羽と宴会へ(7)

三島悠羽の困惑した表情を見て、彼は微笑んで言った。「一般的に、他の人は『狡猾』という言葉が私に当てはまるとは思わないでしょう。でも...あなたが私にくれたこのレッテル、気に入っていますよ」

杉本瑠璃は目尻と口角が制御不能に痙攣するのを感じながら、しばらくして小声で呟いた。「老狐め!」

彼女の声は小さかったが、三島悠羽の耳は良く、彼女の言葉を聞き取ってしまった。しかし、三島悠羽は怒る様子もなく、むしろ一層華やかに笑って言った。「お互い様ですね。でも蒼は可愛くて神秘的な小狐ですよ!」

杉本瑠璃は思わず三島悠羽を見つめ、その深い笑みを湛えた瞳と目が合った。彼女は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。それは三島悠羽の魅力に魅了されたからではなく、彼の言葉の裏の意味を感じ取ったからだった。

ずっと杉本瑠璃は自分の秘密が誰かに知られることを心配していた。三島悠羽に出会う前は、誰も彼女に秘密があることに気付かないと思っていた。しかし、三島悠羽に出会ってからは、自分の秘密が守れなくなるような気がしていた。

この感覚は良くなかった。かといって三島悠羽を試すこともできなかった。

三島悠羽のような賢い人物に対して、もし彼女が積極的に探りを入れれば、逆に弱みを握られかねなかった。

ダメだ!

彼女の秘密は絶対に明かせない。もう二度と研究所で科学者たちの研究対象にはなりたくなかった。

「神秘的と言えば、三島悠羽さんほど神秘的な人はいないでしょう?」

三島悠羽は頷き、心地よさそうに目を細めた。まるで杉本瑠璃が彼の呼び方を変えたことに満足しているかのようだった。杉本瑠璃を見つめる瞳には見通すような光が宿っていた。「いますよ。あなたです!」

杉本瑠璃は笑みを浮かべ、この話題にはこれ以上こだわらないことにした。三島悠羽との会話は、特にこういう時は要注意だった。少しでも油断すれば、三島悠羽に隙を見られかねない。この男は恐ろしすぎる。三島悠羽の前にいると、いつも裸にされているような気分になった。

「兄さん、杉本先生、やはりここにいましたか!」

男性の声が、杉本瑠璃と三島悠羽の会話を遮った。杉本瑠璃はほっとする一方で、眉をしかめた。

この三島明はまた何しに来たのだろう。自分が嫌われ者だということが分からないのか?