第159章 同室で過ごす(8)

杉本瑠璃が見なくても、この濃い血の匂いだけで田中さんの状態が危険だと判断できた。早急な治療がなければ、命が危ないかもしれない。

「私が運転するから、見てあげて」

助手席に座っている三島悠羽が、ようやく口を開いた。先ほどから、杉本瑠璃は三島悠羽が黙り込んで、眉をしかめているのに気づいていたが、その理由が分からなかった。

しかし今、彼女は突然理解した。三島悠羽は深刻な潔癖症だったのだ!

三島悠羽が彼女と一緒にいる時は、潔癖症の症状を全く見せなかったため、長い間、杉本瑠璃はこのことを自然と忘れていた。

今、車内は散らかり放題で、埃はもちろん、至る所に血痕があり、その濃い血の匂いは杉本瑠璃でさえ耐え難いものだった。

三島悠羽のような重度の潔癖症の人は、朝日執事が彼の車椅子を押す時でさえ特製の手袋をつけなければならないのに、今まで不満を一切見せず、さらに自ら運転を申し出たことに、杉本瑠璃は彼への評価をさらに上げた。

潔癖症を克服するのは、決して簡単なことではないのだ。

しかし緊急事態なので、ここで医術を知っているのは彼女だけだ。幸い、彼女の手首には常に鍼のセットを携帯していて、車内に他の薬はないものの、この鍼さえあれば一時的に止血することができる。

三島悠羽も無駄話をせず、すぐに助手席から大きく跨いできた。

突然、杉本瑠璃は背中に温もりを感じた。彼女は運転席の半分しか使っていなかったが、今、三島悠羽が残りの半分に座っていた。

三島悠羽の動きは素早く綺麗で、杉本瑠璃を包み込むように、まるで抱きしめているかのような姿勢で、彼女の小さな体を強く抱き寄せていた。

シートは広いものの、二人で跨って座るにはやや窮屈で、杉本瑠璃は背中に三島悠羽の体温を感じ、自分の臀部が彼の太もものつけ根にぴったりと密着しているのを感じた。

運転に気を取られていなければ、きっと今頃は顔を真っ赤にしていただろう。

三島悠羽が座り込んだことで、運転席のスペースはさらに狭くなり、二人はより窮屈な状態になった。

杉本瑠璃の胸はほぼハンドルに押しつけられそうになっていた。運転を三島悠羽に任せるため、彼がまずハンドルを握り、二人で足元の位置を交換し、三島悠羽が完全にペダルをコントロールできるようになったら、杉本瑠璃は運転席から離れる必要があった。