杉本瑠璃が見なくても、この濃い血の匂いだけで田中さんの状態が危険だと判断できた。早急な治療がなければ、命が危ないかもしれない。
「私が運転するから、見てあげて」
助手席に座っている三島悠羽が、ようやく口を開いた。先ほどから、杉本瑠璃は三島悠羽が黙り込んで、眉をしかめているのに気づいていたが、その理由が分からなかった。
しかし今、彼女は突然理解した。三島悠羽は深刻な潔癖症だったのだ!
三島悠羽が彼女と一緒にいる時は、潔癖症の症状を全く見せなかったため、長い間、杉本瑠璃はこのことを自然と忘れていた。
今、車内は散らかり放題で、埃はもちろん、至る所に血痕があり、その濃い血の匂いは杉本瑠璃でさえ耐え難いものだった。
三島悠羽のような重度の潔癖症の人は、朝日執事が彼の車椅子を押す時でさえ特製の手袋をつけなければならないのに、今まで不満を一切見せず、さらに自ら運転を申し出たことに、杉本瑠璃は彼への評価をさらに上げた。