第186章 杉本瑠璃の反撃(15)

杉本瑠璃は素早く顔を背けたものの、三島悠羽のシャツとズボンに吐き出してしまった。

謝る暇もなく、杉本瑠璃はひどく咳き込んでいた。すると背中に温かい手のひらが触れ、優しく背中をさすってくれるのを感じた。

杉本瑠璃は咳き込みながら、三島悠羽に手を振った。謝りたかったのだが、声を出そうとすると咳に変わってしまう。

一方の三島悠羽は、嫌な顔一つせず、むしろ彼女の背中をさすってくれていた。

「スープを飲んで詰まるなんて、杉本先生はいつからそんなに不注意になったのですか。それとも...杉本先生は私の潔癖症を治療しようとしているのでしょうか」三島悠羽のゆっくりとした声が杉本瑠璃の耳に届いた。からかうような調子が感じられたが、今はそれどころではなかった。

「ごほっ...違います...私が...ごほごほっ!」

散々話そうとしても、途切れ途切れで、杉本瑠璃は一言も完全に言えず、むしろ咳がひどくなるばかりだった。

三島悠羽は均一な力加減で杉本瑠璃の背中をさすりながら、思わず笑みを浮かべ、水の入ったコップを差し出した。「水を飲んで、落ち着かせましょう」

杉本瑠璃は無意識にそれを受け取ろうとしたが、よく見ていなかったため、三島悠羽の手を直接握ってしまい、まるで火傷したかのように慌てて手を離した。

「杉本先生は私の手が汚いとでも?」三島悠羽の少し冷たい声が響き、杉本瑠璃は慌てて首を振った。

彼が彼女の手が汚いと思わないだけでもありがたいのに、重度の潔癖症の人の前で、彼の手が汚いなどと言える立場ではなかった。

そこで、意を決して再び手を伸ばし、コップを掴もうとしたが、やはり三島悠羽の手に触れてしまった。

仕方がない、三島悠羽の指が長く、コップ全体を覆っているため、触れずにコップを受け取るのは、ほぼ不可能だった。

杉本瑠璃が力を入れても、コップを三島悠羽の手から取ることができず、再び手を引っ込めるしかなかった。

「では私が杉本先生を手伝いましょう。口を開けてください」三島悠羽は落ち着き払って、まるで何度も繰り返してきたかのように、コップを杉本瑠璃の唇元に運び、杉本瑠璃は無意識に口を開けた。すると冷たい水が口に入り、咳が随分と収まった。