第197章 お前は私に体を洗わせたいのか(11)

杉本瑠璃は師匠と医術について少し話をしてから、その場を去った。

彼女が去る頃には、伊藤さやか一家はすでに帰っていたが、杉本瑠璃はそれを少しも不思議に思わなかった。彼らが診察を求めてきた目的を、すでに理解していたからだ。

伊藤様の妻は最近体調を崩していた。伊藤様が最も愛しているのは、この妻だった。伊藤さやか一家がこのようなことをしたのは、診察を求めることで注目を集め、伊藤様の関心を引こうとしただけのことだった。

杉本瑠璃には自分なりの信念があった。病気を治し人を救うことには全力を尽くすが、他人のパフォーマンスの道具にはなりたくなかった。

もし伊藤さやか一家三人が、本当に誠心誠意診察を求めていたのなら、彼女の態度も違っていたかもしれない。

夜、三島悠羽の住まいに戻った杉本瑠璃は、まだ少し緊張していた。外出する時に誰にも告げなかったので、そっと戻るつもりだった。