第200章 お前は私に体を洗わせたいのか(14)

慌ただしく、杉本瑠璃はようやく朝食を済ませ、家を出た。

すると薬草堂から電話がかかってきた。薬草堂が荒らされたという!

杉本瑠璃はこのニュースを聞いて驚いたが、すぐに伊藤さやかの仕業だと分かった。

杉本瑠璃が急いで薬草堂に駆けつけると、案の定、店内は散乱し、店員の田中さんの顔には青あざがあり、明らかに殴られた跡があった。

ただし、怪我の具合を見る限り、それほど深刻ではなかった。

杉本瑠璃はこの状況を目にして顔が曇った。以前、伊藤さやかに手を出さなかったのは、伊藤家の面子を立てて、自分に面倒を招きたくなかったからだ。

しかし今や伊藤さやかは更に傲慢になり、もはや伊藤家の面子を立てる必要もなくなった。

「田中さん、しばらく休んで怪我を治してください。医療費と給料は全額支給します。怪我が治ったら、また出勤してください。」

店員の田中さんはここの古参従業員で、今回突然殴られたにもかかわらず、辞める気配は全くなかった。

「杉本先生、吉川先生のところに…例外を作って、あの家族を診てもらえないでしょうか?彼らは本当に恐ろしく、手に負えません。」

田中さんは明らかに怯えていた。伊藤さやかは伊藤家の人間で、伊藤家には暗い過去があり、今のY市でこれほど堂々と暴力を振るえるのは、恐らく伊藤家の人間だけだろう。

周囲の惨状を見て、杉本瑠璃は怒りが込み上げてきた。このような屈辱は、転生後初めての経験だった。

伊藤家を警戒していなければ、あの日伊藤さやかが騒ぎを起こした時点で、きちんと懲らしめていただろう。

「田中さん、吉川先生は?」

田中さんは少し躊躇してから言った。「吉川先生は…連れ去られました!」

なんだって!

師匠が誘拐された!

「連れ去られた?あいつらがやったのか?」杉本瑠璃の声は冷たく、田中さんを震え上がらせた。

田中さんは頷きながら、殴られた顔を押さえつつ言った。「はい、彼らが連れ去りました。あいつらは本当に恐ろしかった。店に入ってきて、まず薬草堂を荒らし、それから裏庭に押し入って、吉川先生を縛って連れて行きました。吉川先生はまだ寝ていて、何が起きたのか分からないうちに連れ去られてしまいました。」

杉本瑠璃はこれを聞いて、完全に暗い表情になった。

よくも!

伊藤さやか、こんな手段を使うとは。ふん、本当に自分を軽く見すぎている。