第212章 一躍千里(その11)

杉本瑠璃は羽田和彦が現れるとは思ってもみなかった。外で何か音がして、人だかりができているような気配を感じたので、伊藤様か三島悠羽が来たのかと思い、急いで外に出てみたのだ。

しかし、出てみると伊藤様でも三島悠羽でもなく、羽田和彦と羽田真央だった。

羽田真央を見て、杉本瑠璃は自然と親しみを感じ、笑顔で彼女の側に寄って言った。「真央ちゃん、来てくれたのね!」

羽田真央は杉本瑠璃に大きな笑顔を返し、片手を彼女の肩に置いた。それは先ほど彼女の兄が彼女の肩に手を置いたのと全く同じ仕草だった。

「あなたは私の親友よ。親友のお店のオープンに来ないわけないでしょう!応援に来たの、歓迎してくれる?」

「応援に来てくれるなんて、願ってもないことよ!」

杉本瑠璃は彼らが来るとは思っていなかったが、この行動は彼女に一つのメッセージを伝えていた。彼女にも友人がいるということを。

それは日常的な友人関係だけでなく、ビジネスの世界でも彼女を支援してくれる友人だということを。

「蒼ちゃん、このイケメンが立っているのに、妹とばかり話すなんて、もったいないじゃないか!」

羽田和彦は我慢できなくなった。まさか妹に注目を奪われるとは。しかも杉本瑠璃の関心が常に羽田真央に向いているのが、彼にとってはたまらなかった。

杉本瑠璃は羽田和彦を一瞥して笑いながら言った。「羽田お坊ちゃまは、まさか自分の妹にまで嫉妬するんじゃないでしょうね?印象では、そんなに器の小さい人じゃなかったと思うんですけど」

羽田真央も兄をからかうのが得意で、遠慮なく羽田和彦を揶揄った。「お兄ちゃん、その嫉妬はちょっとひどすぎるわよ。蒼はあなたの何でもないし、あなたの手には乗らないわ。早く中に入りましょう。でないと、メディアがまた変なことを書き始めるわよ」

羽田和彦は妹に負けて、三人でパラダイスの中に入った。外ではフラッシュの光が絶え間なく続いていた。

「これは大ニュースだ!このパラダイスのオーナー杉本瑠璃が羽田グループの人々と知り合いだなんて。羽田家の兄妹とかなり親しそうじゃないか!今まで全く噂もなかったのに!」

「独占スクープだ!これは間違いなく大スクープ!ねえ...この杉本瑠璃って、もしかして羽田様の新しい彼女なんじゃない?」