第214章 一躍千里(その13)加筆

「私が涙を流したのは……」杉本お母様が言い終わる前に、高橋友美に遮られた。

「もういいわよ。誰もあなたが泣いている理由なんて知りたくないわ。人の喜びの日に、ここで泣くなんて、縁起でもない。もしここの店主に見られたら、追い出されるわよ」

高橋友美は非常に嫌悪感を露わにして手を振り、杉本お母様を見下すような態度を見せた。

伊藤明里はそれを聞いて、少し困ったような表情を浮かべたが、何も言わなかった。

むしろ杉本お母様は、高橋友美の言葉を聞いて、杉本瑠璃が母親が怒り出すと思ったが、予想に反して、杉本お母様は怒るどころか、むしろ笑い出した。

「ふふ、今日は私が泣くどころか、ここで騒ぎを起こしても、誰も私を追い出すことはできないわ。なぜなら……」杉本お母様は笑いながら、誇らしげに言った。「パラダイスは杉本家のものだからよ!」

えっ?

今、田中美奈は何て言った?

パラダイスは杉本家のもの?

ふふ、冗談でしょう、本当に笑えるわ!

高橋友美にはとても信じられなかった。彼女は杉本律人が最近破産したことを知っていたのだ。破産した家族が、パラダイスのような高級宝石店を持っているはずがない!

「ふん、田中さん、大きな口を叩くのはいいけど、そんなことを同窓生の間で言うのならまだしも、もし他の人に聞かれたら、笑い者になるわよ!」

田中美奈も大きな風波を経験してきた人だったので、その場で怒りを爆発させることはなく、ただ言った。「あなたはパラダイスのオープニングに来たのに、招待した人があなたにここの店主が誰か教えてくれなかったの?」

杉本瑠璃は最初、母親を守ろうと思ったが、母親がこんなに自信に満ちた様子を見て、傍観者でいることにした。

杉本お母様はすでに以前の破産の暗い影から抜け出し、高橋友美のような悪女にどう対処すべきかも分かっていた。

そうであれば、母親の出番を見守ろう。母親にも痛快な思いをさせてあげよう。

一方、高橋友美は田中美奈のそのような態度を見て、少し躊躇した。結局、彼女は招待されていなかったのだ。伊藤明里の夫の招待に便乗しただけで、このパラダイスの店主が誰なのか知るはずもなかった。