第215章 一躍千里(その14)

「何もわかってないくせに!無知な!私たちの業界では、そもそも値引きなんてないのよ。あの翡翠はどれも高価なもので、ちょっとした値引きでも数百万、時には数千万円の差額になるのよ!それに、聞いたでしょう?伊藤様でさえここでは2割引きだけなのよ。私たちなんて伊藤様の前では、蟻にも及ばないのよ!もし私たちの値引きが伊藤様より大きかったら、もう生きていけないわ!」

中川肥塚は見識のある人物で、今思い返すと背筋が寒くなった。杉本瑠璃という女性が分別があってよかった、さもなければ本当に命取りになるところだった。

その後、中川肥塚が伊藤様のことについて説明すると、彼女たちは呆然となった。

「えっ?まさか!」伊藤明里は夫がこんな様子を見るのは初めてで、今では彼女も緊張し始めた。

同時に、深く衝撃を受けた。この杉本瑠璃がこんなに若いのに、伊藤様のような人物と関係があるなんて、信じられないことだった。