第224章 一躍千里(その23)加筆

とにかく三島悠羽が現れた瞬間、羽田和彦は自分にもう勝ち目がないことを悟った。三島悠羽が出てきた以上、どんなに翡翠が欲しくても、三島悠羽の実力には到底及ばないのだ。

羽田和彦はため息をつきながら、心の中で悔しさが込み上げてきた。こうなることが分かっていれば、先ほどの墨翡翠を先に買っておくべきだった。

少しは収穫があったと思っていたのに、今となっては何も得られなかった。

目をつけた翡翠は全て、最後は他人に奪われてしまった。

強盗!みんな強盗だ!

今この瞬間、羽田和彦の心の苦しみを理解できる人はいないだろう。

確かにこの価格は非常に魅力的で、もし彼女が本当にこの50億円を持っているなら、これから展開しようとしているビジネスは、資金面では間違いなく問題ないはずだ。

でも...なんだか変な感じがする。おそらく、この翡翠を三島悠羽が落札したからだろう。

「三島様、本当によくお考えになってますか?50億円は決して小さな金額ではありません。この翡翠は確かに希少ですが、決してその価値はありません。よくお考えください。」

杉本瑠璃は三島悠羽の耳元で小声で諭したが、三島悠羽は目に笑みを浮かべながら、「私が入札した以上、買う覚悟はできている。それに、金は価値があるが玉には価値がない。この翡翠が50億円の価値があるかどうかは、完全に私の判断次第だ。私がその価値があると思えば、それだけの価値がある。」

杉本瑠璃も、三島悠羽が一度決めたことは変えないことを知っていたので、三島悠羽の好きにさせるしかなかった。

案の定、50億円という価格が出た後、誰も値を上げる人はいなかったし、値を上げられるはずもなかった。羽田和彦はその場に座り、可哀想なほど憂鬱な表情を浮かべていた。

杉本瑠璃は呆然とする山田ひろしに目配せをし、山田ひろしは目を瞬かせてようやく我に返った。

「50億円の価格ですが、50億円を超える価格はございませんか?」山田ひろしは言い終わって、自分の口を叩きたくなった。

冗談じゃない、もう50億円なのに、どうしてもっと高い価格があるはずがない。これは無駄な質問じゃないか。

「えー、それでは、この翡翠は50億円で三島グループの三島様のものとなりました。」

山田ひろしは翡翠を持って三島悠羽のところに渡そうとしたが、朝日執事に止められた。