三島悠羽が我に返った時、先ほど彼の服に果汁をかけてしまったことに気づいた。まもなく飛行機は着陸するが、この服装では登録に行けないだろう。
「あの...シャツの替えはありますか?着替えたほうがいいと思います」
時々、杉本瑠璃は疑問に思う。実は彼女が三島悠羽の潔癖症を治したのではなく、毎回彼をぐちゃぐちゃにしてしまうので、彼が慣れてしまっただけなのではないかと。
三島悠羽はある方向に顎をちょっと上げて言った。「あちらに新しいシャツと、君用の服も用意してある」
杉本瑠璃が振り返ってその方向を見ると、確かにそこには二組の服が置いてあった。どちらもフォーマルな服装で、一組は三島悠羽用の男性服、もう一組は杉本瑠璃用の女性服だった。
彼女は驚いた。三島悠羽がこんな短時間で、結婚登録の準備だけでなく、服まで用意していたとは。
昨夜、三島悠羽が自分の隣で寝ていたことを知らなければ、昨晩これらの準備をしに出かけていたのかと思うところだった。
杉本瑠璃は周りを見回してから、まず三島悠羽の服を取り、彼に手渡した。
「着替えを手伝って」
三島悠羽は断る余地のない口調で言った。実際、杉本瑠璃は以前から三島悠羽の着替えを手伝ったことがあり、もう慣れていたので、特に難しいとは感じなかった。
ただし...今は少し状況が特殊で、葵がすぐ近くに立っているため、少し恥ずかしく感じ、思わず葵の方を見てしまった。
葵はすでに目を丸くして頭が働かなくなっていた。彼は今、間違いなく聞いたのだ。ボスが杉本瑠璃に着替えを手伝わせるなんて!
うーん...以前、ボスは怪我をしていても自分で着替えることを頑なに主張し、誰にも手伝わせなかったのに、今日は自ら杉本瑠璃に着替えを手伝わせるなんて!
なんてこった!
信じられない!
この世界はどうなってしまったんだ?
太陽が西から昇ったのか、それとも赤い雨が降ったのか?
とにかくボスは普段と違う。まさかボスにも女性を好きになる日が来るとは。
以前、彼らは内密に、ボスが女性を好まないのは、もしかして男性が好きなのではないかと話し合ったことがあった。
今となっては、当時の彼らの心配は余計だったようだ。
三島悠羽の性的指向は正常で、もう心配する必要はなくなった。