第252章 私たちは結婚しました！（16）

山口健太は杉本瑠璃を一瞥し、何も言わずに娘に向かって言った。「ほら、杉本さんも理解を示してくれたじゃないか」

山口小百合はようやく諦めた。

その時、ずっとそこに立っていた男女は、まだ座っていなかった。

山口小百合がその二人を見て、尋ねた。「お父さん、この人たちは誰？」

山口健太は杉本瑠璃を見てから、少し間を置いて言った。「こちらへ来て座りなさい」

二人は山口健太の言葉に従い、歩いてきてソファに座った。二人とも顔を隠すようにしていて、正面から顔を見ることができなかった。

「小百合ちゃん、この二人は父の会社のタレントだよ。今日は彼らが問題を起こしたから、父は外出せざるを得なかったんだ」

山口小百合は頷き、この二人をちらりと見て言った。「お父さん、彼らが間違いを犯したの？だったら罰しないであげて。可哀想そうだよ」

杉本瑠璃はこの二人を一目見ただけで、彼らの正体を理解した。二人は現在国内で最も人気のある男優と女優だった。

以前から二人の交際の噂が流れていたが、常に否定され、当時は二人のキャリアにも影響を与えていた。その後、噂が晴れてから、彼らは再び人気を取り戻した。

そして今日、二人はLoyaでデートをしていたところを山口健太に見つかり、直接捕まってしまったのだ。

ああ...本当にドラマチックすぎる。

スターのデートが見つかってしまうなんて、しかも自分のボスに見つかるなんて...本当に不運だ。

「山口さん、私はこの後他の用事がありますので、手短に済ませましょう」杉本瑠璃も分かっていた。山口健太は彼女の前でこの二人のタレントを叱責したくないのだろう。

結局、彼らは特別な立場にあり、噂が広まれば大変なことになる。

だから二人は入室してから誰も話さず、うつむいたまま、自分たちの正体を見られないようにしていた。

「確かに以前、山口さんを助けたことはありますが、それは偶然に過ぎません。当時、山口さんでなくても、私は助けていたでしょう。皆さんの誠意は十分に伝わりました。この件は、これで終わりにしましょう」

杉本瑠璃は、この件で山口小百合に付きまとわれ続けたり、山口健太の義理の娘になったりすることは望んでいなかった。

そんな「幸運」は、彼女には荷が重すぎた。

「でもそれじゃダメよ！私を助けてくれた恩人なんだから！」