鈴木てんいちは深いため息をつくと、バッグから女の子のものより高価で良質なパンとソーセージを取り出して、「交換する必要はない。これを全部あげるよ」と言った。
女の子は一瞬呆然として、手にしているパンとソーセージを見て、また鈴木てんいちの手にあるパンとソーセージを見た。
「違います。私が交換したいのは、あなたたちが今食べているものです」
鈴木てんいちはその女の子を見て、「同級生、トラック一台分のパンとソーセージを持ってきても、私たちが食べているものとは交換できないよ。条件は厳しいけど、我慢して、パンとソーセージで済ませてね」と言った。
冗談じゃない。この料理は自分がおこぼれにあずかっているものだし、外では絶対に食べられないものなのに、この女子学生がパン一個とソーセージ一本で交換しようとするなんて。
本当に...まあ、純真すぎるよ。
これは普通の石ころで宝石を交換しようとするようなものだ。
【交換してくれない?どうしよう?安藤間先生が久しぶりに私に任務を与えてくれたのに、彼らが食べているものを手に入れられなかったら、きっと安藤間先生に落とされてしまう】
杉本瑠璃は少し躊躇した。安藤間がこの女の子に彼らの食べ物を要求させたのだと分かり、杉本瑠璃は安藤間のこうした行動を本当に奇妙に感じた。
これらは全て三島悠羽が彼女のために用意したものだ。友達とは分け合えても、見知らぬ人と安易に交換するつもりはなかった。
安藤間はおろか、目の前のこの見知らぬ女の子にも、杉本瑠璃は絶対に渡すつもりはなかった。
「安藤間が食べたいなら、自分で来て要求すればいい」杉本瑠璃は遠慮なく言った。
言い終わると、その女の子は一瞬固まった。自分は安藤間先生のことを言っていないはずなのに!
斎藤きくことと鈴木てんいちはその女の子を見て、その女の子の表情から、杉本瑠璃の推測が当たっていて、本当に安藤間が食べたがっていることが分かった。
その瞬間、鈴木てんいちまでもが可笑しく感じた。この安藤間はよくもそんな厚かましいことができるものだ。
前日まで杉本瑠璃を標的にしていたのに、今日は学生を使って杉本瑠璃から食べ物を要求するなんて、本当に笑止千万だ。