杉本瑠璃は三島悠羽を見て、目に驚きの色が浮かんだ。「まさか、テントを持ち帰ってきたの!しかもリビングに張ってるなんて!」
モダンなリビングにそぐわないキャンプテントが張られているのを見た杉本瑠璃は、正直なところ……
えっと……少し違和感を覚えた。
三島悠羽は微笑んで言った。「こんな記念になるものを野外に放置するわけにはいかないでしょう。でもリビングに置くのは確かに不便ですね。朝日執事、テントを小庭園に移動してください」
小庭園にテントを張るのは、なかなか良さそうだと杉本瑠璃も頷いて同意を示した。
「あそこなら確かに合ってるわね」杉本瑠璃は小庭園のテントを想像して、途端に生活感が増したような気がした。
ここは帝国ホテルだけど、少しずつ、家らしい雰囲気が出てきたような気がする。
「気に入ってくれて良かった!」
三島悠羽の目には笑みが浮かび、杉本瑠璃には気づかない愛おしさで満ちていた。
「うん、とても気に入ったわ」
杉本瑠璃が予想もしていなかったことに、今日の夕食も三島悠羽が用意したものだった。杉本瑠璃は本当に驚いた。
どこでそんな時間を作ったのだろう?
正直、杉本瑠璃は心が温かくなるような感動を覚えた。特に……三島悠羽の料理の腕前が素晴らしすぎた。
そうして……杉本瑠璃は夜、食べ過ぎて胃が苦しくなった。言い出せずに、部屋の中を行ったり来たりして、なんとか運動で消化しようとした。
ああ!
自分にこんな食いしん坊の素質があったなんて、知らなかった!
三島悠羽に出会う前は、杉本瑠璃にとって食事は基本的な生活を維持するためのものだった。でも三島悠羽に出会い、彼の料理を味わってから、時には食事が口福のためのものだということを知った。
まずい!
三島悠羽は既に彼女の胃をしっかりと掴んでいた!
三島悠羽が部屋に入ってきた時、杉本瑠璃が行ったり来たりしているのを目にした。彼女の目は宙を泳ぎ、何を考えているのか分からなかった。
「もしかして食べ過ぎた?」三島悠羽は様子を観察して、笑いながら尋ねた。
杉本瑠璃は我に返り、照れくさそうに三島悠羽を見て、にやにやと笑った。「あなたの料理が美味しすぎるから、我慢できなかったのよ!」