杉本瑠璃は六体目の遺体の前に歩み寄ると、すぐに血の臭いを感じ取った。
遺体は専用の冷蔵庫に保管されていたにもかかわらず、血の臭いがするということは、この遺体は...見た目があまり良くないことを意味していた。
杉本瑠璃が白い布に手をかけると、全員の視線が彼女の手に集中し、息を殺して次の瞬間を待った。
杉本瑠璃は予告もなく、素早く白い布を剥ぎ取った。
その瞬間、血まみれで肉がむき出しになった女性の遺体が全員の前に現れた。顔の形はもはや判別できず、交通事故で轢かれたため、頭部は押しつぶされて原形をとどめていなかった。
さらに、冷蔵庫から出されたため、凍っていた血や肉、白い脳漿などが徐々に溶け始めていた。
杉本瑠璃は心の準備をしていたものの、このような衝撃的な光景に驚いてしまった。しかし、表情には出さず、わずかに眉をひそめただけだった。
間違いなく、この交通事故は非常に深刻なものだったに違いない。そうでなければ、これほどの惨状にはならなかったはずだ。
杉本瑠璃は、もしかしたら解剖学の教授が彼女が来ることを知っていて、わざとこのような遺体を用意したのではないかとさえ考えた。
すでに気の弱い学生たちは目を閉じ、悲鳴を上げていた。今夜も夕食は食べられそうにない!
あまりにも気持ち悪く、あまりにも惨たらしかった。
同時に、今日の準備作業を担当しなくて良かったとほっとしていた。さもなければ、数日間食事ができなくなっていただろう。
しかし、彼らが再び杉本瑠璃に注目したとき、意外なことに気づいた。杉本瑠璃は叫び声も上げず、目も閉じず、怖がって飛び上がることもなかった。
何の反応も示さず、ただ遺体の前に立ち、まるで目の前に何もないかのように冷静だった!
なんてこった!
こんなに落ち着いているなんて!
初めて遺体安置所に来たのは彼らなのか、それとも杉本瑠璃なのか?
杉本瑠璃がこんなに冷静なんて、彼らの立場がないじゃないか?
すごすぎる、すごすぎる!
周りの人々は混乱し、杉本瑠璃は人間じゃないんじゃないかと思った。普通の人なら何かしらの反応を示すはずだ!
しかし彼らは知らなかった。杉本瑠璃が反応を示さなかったのではなく、必死にその反応を抑え込んでいたのだ。