第307章 威風堂々(11)

そんな杉本瑠璃を見て、鈴木光男は少し戸惑った。彼は杉本瑠璃が来てからずっと、低姿勢を保っていると思っていた。

三島悠羽の専属医師という立場にもかかわらず傲慢にならず、彼らが出した難題にも文句を言わずに一つ一つ受け入れていた。

杉本瑠璃はとても話しやすい人だと思っていたが、まさか……

それは全て見せかけだったのだ!

全て嘘だったのだ!

そうだ!

嘘だったのだ!

誰が杉本瑠璃は気が優しいと言ったのか?誰が彼女は虐められやすいと言ったのか?

くそっ!

結局のところ、杉本瑠璃こそが完全な腹黒野郎で、解剖学の教授よりも腹黒かったのだ!

鈴木光男は突然、みんなの代表として杉本瑠璃をいじめに行くのは間違った決断だったのではないかと思い始めた。

この杉本瑠璃……後で仕返しされるんじゃないだろうか?

鈴木光男は杉本瑠璃を見れば見るほど、その可能性が高いと感じた!

「杉本さん、ほら、僕がこんなに積極的に手伝ってあげたんだから、これも何かの縁だよね。今日あなたを困らせようとしたのは、先生の意向もあってのことで、僕の考えじゃないんだ。それは覚えておいてね。」

実は鈴木光男も自分がなぜ杉本瑠璃にこんなことを言うのか分からなかった。以前は人をいじめるとき、こんなことは一度もなかった。

しかし今日は何故か、杉本瑠璃の意味深な言葉と、その不気味な笑顔を見ていると、重要な時期に自分を守る必要があると感じたのだ。

まずは杉本瑠璃と良好な関係を築いておこう。

杉本瑠璃は極めて冷静に頷き、口角が微かに上がり、人の心を不安にさせる弧を描いた。

「安心して。全部覚えていますから。」

またもやこの意味深な調子で、鈴木光男はなぜか、自分の言い訳が逆効果になっているような気がした。

「よし、これから今日の解剖を始めましょう。簡単なものからやりましょう。直接開胸しますが、内臓器官に触れないように注意してください。胸腔と腹部を開いて、内臓が見えるようにするだけでいいです。後ほど、内臓についての説明をします。」

教授は軽々しく言ったが、みんなは戦々恐々としていた。

心の中で教授の変態ぶりを罵り、これが簡単なものだと?くそっ、これが簡単なら、難しいのは一体どんなものだ?

杉本瑠璃は隣の鈴木光男を見て、そして言った。「では……始めましょうか。」