第310章 威風堂々(14)追加分

杉本瑠璃が帝国ホテルに戻ってきたばかりで、車を降りた後、少し躊躇した。

今日は遺体安置所から戻ったばかりで、しかもあれほど多くの遺体に近づいたため、自分でも体についた匂いに耐えられないほどだった。

潔癖症の三島悠羽ならなおさらだ。

でも、三島悠羽も医学部出身だったはず。誰かに嫌がらせをされたことがあるのだろうか。

きっと...ないだろう。

杉本瑠璃が入る前に、三島悠羽が出てきて、瑠璃が戻ってきたのを見て、彼女の方へ歩いてきた。

杉本瑠璃は思わず数歩後ずさりし、急いで手を上げて三島悠羽が近づくのを制止した。「近づかないで。」

三島悠羽は瑠璃の警戒する様子を見て、思わず苦笑いしながら足を止めた。

「帰ってきたばかりで、ゲームでもしたいの?別に構わないけど。」三島悠羽は腕を組んで、口角を少し上げた。

杉本瑠璃はさらに数歩後ずさりしてから言った。「ゲームなんかじゃないわ。死体の山から這い出てきたばかりだから、先にシャワーを浴びたいの。」

三島悠羽はまるで既に知っていたかのように言った。「嫌がらせされたみたいだね。まあ、今日医学部に転入したばかりで、しかもあの変態の解剖学の先生に当たったんだから、嫌がらせされないわけがないよね。」

三島悠羽も紅葉学園医学部の卒業生だから、学校でのそういった事情は当然知っていた。

「私が遺体安置所に行ったことを知ってたの?」杉本瑠璃は少し驚いた様子で尋ねた。

三島悠羽は笑って言った。「知っていることはまだまだたくさんあるよ。先にシャワーを浴びておいで。死体の臭いを消すための特別な入浴剤は既に用意してある。」

「そんなに良いの?専用の入浴剤まであるの?」杉本瑠璃は確かに、体についた匂いがあまり良くないことを認めざるを得なかった。

強い消毒液の匂いがなければ、遺体の臭いに本当に耐えられなかっただろう。

「専属で君を洗ってあげる人もいるけど、必要?」三島悠羽は口角を上げ、目を細めて狡猾な狐のような表情を浮かべた。

「いらない!」杉本瑠璃は急いで答えた。「自分で洗うから大丈夫よ。そこまで気を使わなくても、へへ。」

三島悠羽は残念そうな様子を見せた。「あぁ、せっかく準備したのに、使ってもらえないなんて残念だなぁ。」