杉本瑠璃はそれらの台詞を一瞥したが、鈴木てんいちよりはましだった。鈴木てんいちは一目見ただけで投げ捨てたが、杉本瑠璃は最初から最後まで目を通した。
真面目に読んでいるように見えたが、読み終わって台詞を閉じると、鈴木てんいちにすぐさま手から奪い取られた。
そして杉本瑠璃の台詞も、鈴木てんいちの台詞とほぼ同じ扱いで、鈴木てんいちによって適当に捨てられた。
「もういいよ!お前みたいな忙しい人は見なくていい。経済学部に医薬学部に、一体どこからそんな時間が出てくるんだ。水無瀬元宗なんかと遊んでいられて」
鈴木てんいちは早くから見抜いていた。杉本瑠璃も本質的には自分と同じで、今回のオーディションを真剣に考えていないことを。
斎藤きくこは鈴木てんいちを白い目で見て、「蒼は私と遊んでいるの。水無瀬元宗なんかと関係ないわ。余計なことを言わないで」と言った。