杉本瑠璃はそれらの台詞を一瞥したが、鈴木てんいちよりはましだった。鈴木てんいちは一目見ただけで投げ捨てたが、杉本瑠璃は最初から最後まで目を通した。
真面目に読んでいるように見えたが、読み終わって台詞を閉じると、鈴木てんいちにすぐさま手から奪い取られた。
そして杉本瑠璃の台詞も、鈴木てんいちの台詞とほぼ同じ扱いで、鈴木てんいちによって適当に捨てられた。
「もういいよ!お前みたいな忙しい人は見なくていい。経済学部に医薬学部に、一体どこからそんな時間が出てくるんだ。水無瀬元宗なんかと遊んでいられて」
鈴木てんいちは早くから見抜いていた。杉本瑠璃も本質的には自分と同じで、今回のオーディションを真剣に考えていないことを。
斎藤きくこは鈴木てんいちを白い目で見て、「蒼は私と遊んでいるの。水無瀬元宗なんかと関係ないわ。余計なことを言わないで」と言った。
鈴木てんいちは肩をすくめ、今回は斎藤きくこに反論せず、同意して頷いた。「そうだな、言い間違えた」
この二人が会うと口喧嘩を始める様子は、まるで相性の悪い恋人同士のようだった。
「二人とも口喧嘩を続けていて。私は先に授業に行くわ」
杉本瑠璃は笑いながら先に立ち去った。振り返ったとき、安藤颯と目が合った。安藤颯は杉本瑠璃が自分を見ているとは思っていなかったようで、慌てて顔を背け、さっき杉本瑠璃を盗み見ていたのは自分ではないかのようなふりをした。
安藤颯がどんな考えを持っているか、杉本瑠璃にはよく分かっていた。典型的なイケメン寄生虫だ。しかも、今あるものに満足せず、さらに欲張る類の寄生虫だ。
最も笑えるのは、安藤颯が安藤間を誘惑しようとしながら、同時に彼女のことも気にかけていることだった。
本当に...彼女も呆れた。
以前、安藤颯が石川静香を誘惑していた時も、どうすれば杉本瑠璃も一緒に手に入れられるか考えていて、両方とも欲しがっていた。
ふん、杉本瑠璃は自分に少し感心してしまった。一体何が安藤颯を今でも彼女のことを気にかけさせているのか、もう変えられないのだろうか?
「わかばちゃん、待って、一緒に行こう!」鈴木てんいちは急いで杉本瑠璃に追いつき、斎藤きくこにも声をかけた。「きくちゃん、頑張ってね!」
鈴木てんいちはニックネームをつけるのが大好きで、今では斎藤きくこにこんな酷いあだ名をつけていた。