案の定、杉本瑠璃の予感は的中していた。報酬はいらないと言う前に、黒い影が覆いかぶさってきた。
柔らかく涼しげな紅い唇が、正確に彼女の唇を捕らえ、そのまま抱きしめられながらキスをされた。
このようなキスの仕方に、彼女は言い表せない感覚を覚えた。とにかく、三島悠羽のキスの姿勢やタイミングは、すべて彼女の認識を超えていた。
前回、温泉に入っているときに、岸辺の三島悠羽にキスをするように言われた姿勢は、今思い出しても頬が熱くなる。
先ほどのキッチンカウンターでの、支配的で優しいキスにも、彼女は対応できなかった。
今では、キスというものには様々なバリエーションがあるという錯覚すら感じていた。
少なくとも、彼女は今まで聞いたこともない方法を何度も経験していた。
このまま進展していくと、杉本瑠璃は本当に心配になった。次は三島悠羽がどんな技を見せてくるのか分からない。